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経済
【エコノナビ】「情報銀行」構想に期待
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通信教育大手「ベネッセコーポレーション」の顧客情報流出=2014年7月14日現在 ベネッセコーポレーションで発覚した個人情報の大量漏洩(ろうえい)事件は、情報保護の不備を改めて浮き彫りにした。ベネッセでは最大約2070万件が漏洩した可能性があると説明しているが、漏らされた側の顧客には結局、何らの救済措置もないまま事件がうやむやになってしまうのではないか。
この事件から導き出された教訓は、内部の情報管理強化と個人情報の不正売買に対する罰則強化なのは言うまでもない。ただ、大事なのは個々人が自分の情報がダダ漏れになっている実態を深刻に受け止め、自ら情報を管理する社会システムの構築に向けて声を大にしなければならないということだ。
まず、自分のどのデータを誰が使っているのか、何に使っているのかなどを、個人がいつでも把握できる環境整備が必要だ。そして場合によっては、その個人情報を使うのをやめさせる手立てがきちんと整っていることが重要である。
現行の個人情報保護法では、情報の利用に原則本人の同意が必要であるとしながら抜け穴がある。個人情報を第三者に提供することをうたい、それを拒否する手順などをあらかじめホームページなどで明示すれば、同意を得なくても利用できるという例外規定がそれだ。この規定が拡大解釈されて、個人情報が勝手に流用されたり、売却されたりしているのが現実である。
そこで、明確な形で個人が自分の情報を提供し、企業がそれを効率よく利用できる「情報銀行」構想が検討されている。個別の会社が資産としてそれぞれ抱えている個人情報を持ち寄って銀行に預けるという手法だ。そして、その銀行には「個人口座」ごとに情報が名寄せされており、企業が利用料を払って情報を入手する。
この構想については2013年9月末に東京大学空間情報科学研究センターと慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科が合同で「情報銀行コンソーシアム(仮称)」の設立を発表し、実現に向けて動き出した。個人の生活の利便性向上とともに情報管理を個人の手に取り戻す試みとして構想の行方を注視していきたい。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)