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新たな任務 火星で酸素生成 有人飛行備え NASA、次期探査車に実験装置

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新たな任務 火星で酸素生成 有人飛行備え NASA、次期探査車に実験装置

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 米航空宇宙局(NASA)は7月31日、2020年に火星を目指して打ち上げる次期無人探査車の概要を発表した。この探査車では、宇宙飛行士が快適に生活できるよう、火星の大気中の二酸化炭素を分解して酸素を生成したり、その酸素でロケット燃料を作り出すという世界初の実験を行うほか、火星の資源の有効活用に向けた調査を実施する。米が2030年代に実現を目指す火星への有人探査に向けた重要な実験で、民間宇宙旅行の実現が迫り、オランダの民間非営利団体が火星移住計画を進めるなか、火星への旅行や長期滞在が一気に現実味を帯びそうだ。

 二酸化炭素に着目

 「2020年に打ち上げる火星探査車は、宇宙飛行士らが直面する火星環境に関する疑問に答えを出すほか、火星への着陸や探査、地球への帰還に必要な技術実験の助けになるだろう」

 NASA有人探査部門のウィリアム・ゲルステンマイアー副主任は、次期火星探査車について、声明でこう意義付けた。

 NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、酸素を作り出す実験は、探査車に搭載する「勇気」と名付けた実験装置で行う。装置は米マサチューセッツ工科大(MIT)のマイケル・ヘクト博士率いるチームが開発に着手する。

 火星の大気は非常に薄いが、主成分は二酸化炭素で、NASAはこれに着目した。ヘクト博士は、将来、有人宇宙船が地球と火星を往復するのに必要な酸素は火星で十分作り出せると明言。さらに、作り出した酸素や火星での採掘物などでロケット燃料(軽水素)も製造する。

 このほかにも、火星の資源を地球で有効活用するため、探査車には、撮影した画像をパノラマに立体化したり、火星資源の科学組織や鉱物の分析に加え、遠方からでも岩や地表が含む有機化合物を検出できる高性能カメラや分光計、地中探査レーダーなどを搭載するという。

 運ぶ物資を減らす

 最新機器を搭載したこの探査車にかかる費用は19億ドル(約1955億円)。ゲルステンマイヤー副主任は今回の実験について「火星には人間の生命活動の維持に必要な資源が存在する。有効活用すれば、有人探査の際に地球から運ぶ物資などを減らすことができる」と予想する。

 NASAは04年から火星で無人探査車「オポチュニティー」、12年から後継の「キュリオシティー」をともに活躍させ、貴重な成果を上げているが、20年に打ち上げる次期探査車の重要性はかつてないほど高い。

 米の民間宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックは早ければ年内にも宇宙旅行を敢行する予定で、25年からの火星移住を目指すオランダの民間非営利団体マーズワンでは昨年(2013年)12月、全世界から集まった約20万人の移住希望者から1058人を選び、5月にはこれをさらに705人に絞り込むなど、宇宙開発は新たな段階を迎えつつある。

 マーズワンの移住計画は、帰還のための技術やコストの問題から地球に2度と戻れない片道切符。しかし、火星で潤沢(じゅんたく)に酸素やロケット燃料が製造でき、有人飛行に成功すれば、将来、人は地球と火星を自由に往来することも可能になる。

 次期火星探査車について、NASAのチャールズ・ボールデン長官(67)は「われわれの火星への旅は新たな重要な一歩を踏み出した」と胸を張った。(SANKEI EXPRESS

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