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【理研・笹井氏自殺】STAP解明のキーマン 小保方氏らに3通の遺書

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【理研・笹井氏自殺】STAP解明のキーマン 小保方氏らに3通の遺書

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2014年1月28日、小保方晴子(おぼかた・はるこ)さん(左)とともにSTAP細胞の研究発表にのぞんだ理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長=兵庫県神戸市中央区の理化学研究所(共同)  STAP(スタップ)論文の責任著者の一人で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長(52)が8月5日、神戸市中央区のCDBに隣接する先端医療センター内で首をつっているのが見つかり、死亡が確認された。遺書が複数残されており、自殺とみられる。笹井氏は再生医療研究の第一人者として知られ、理研関係者らに衝撃が広がった。

 兵庫県警や理研によると8月5日午前9時前、先端医療センター研究棟の4階と5階の階段踊り場付近で、手すりにひも状のものをかけて首をつっている笹井氏を理研職員が発見した。先端医療センター病院の医師が救命措置を行ったが、搬送先で死亡が確認された。近くにあったかばんの中にSTAP細胞の研究を指導した小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)らに宛てた3通の遺書があったほか、秘書の机の上にも遺書が残されていた。小保方氏宛ての遺書は「STAP細胞を必ず再現してください」との内容だという。県警は自殺とみて調べている。

 理研によると、笹井氏はSTAP論文不正問題への対応で心身ともに疲労した様子だったという。

 笹井氏は万能細胞の一種である胚性幹細胞(ES細胞)の研究で世界的に知られる。7月のSTAP論文撤回の際に「研究者として慚愧(ざんき)の念に堪えない。痛切に後悔し反省している」とのコメントを出していた。

 理研の調査委員会は4月、笹井氏に不正行為はなかったが、小保方氏の指導役として責任重大と指摘。理研の懲戒委員会が処分を検討していた。

 STAP細胞の論文不正問題は、研究を統括した笹井氏が自ら命を絶つという痛ましい事態に発展した。理研は論文で新たに浮上した疑義について、追加調査する方向で準備しているが、重要人物を失ったことで全容解明が困難になる可能性が出てきた。

 STAP論文は、実験作業を主に小保方氏が担当し、全体の構成や論文執筆を笹井氏が主導した。理研は計2本の論文のうち主要論文で小保方氏の不正を認定したが、細胞の万能性を詳述した補足的な論文でも画像の誤りなど多くの疑惑が新たに判明し、追加の予備調査を進めている。

 再生医療の牽引役失う

 笹井氏は小保方氏らとともに、この補足論文で筆頭著者を務めており、実験データや論文作成の経緯を知る立場だった。論文2本は既に撤回されたが、不正の全容解明に向け追加調査は欠かせない。笹井氏の証言が得られなくなったことで真相究明は難しくなる。

 一方、理研は細胞が存在するかどうかを科学的に確かめる検証実験を4月に開始し、近く中間報告を発表する。笹井氏は検証実験に関与しておらず、自殺との関連は不明で、理研は予定通り実験を進めるという。

 また、笹井氏の死去は再生医療を重要な柱と位置付ける国の成長戦略にも影響を与えかねない。笹井氏はES細胞などを使った国の研究プロジェクトを主導しており、昨年(2013年)1月には安倍晋三首相(59)が研究室を視察している。

 笹井氏が所属する研究センターでは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の臨床研究として、目の難病を治療するための移植手術が近く行われるが、笹井氏は移植で使う細胞を作製する基礎技術の確立で貢献した。文部科学省の関連研究で責任者も務めており、牽引(けんいん)役を失った影響が懸念される。

 ≪10日前に体調異変 休養勧める≫

 自殺した笹井副センター長は、最近まで熱心に研究員の論文指導に当たっていた。一方、周囲は体調の異変を感じ取っていた。

 竹市雅俊センター長は「10日ほど前から研究員と科学的なやりとりができなくなったと聞き、休養が必要と家族に提案したばかりだった」と説明。8月4日に笹井氏が通院していることを知らされたという。

 センターの男性研究者も「STAP論文問題が出てから心療内科を受診するようになり、一度は回復したが、最近また体調を崩した。薬の副作用なのか、はっきりしゃべることができない状態だった」と話す。

 10年以上の付き合いがある斎藤茂和(しげかず)副センター長は、笹井氏の人柄を「元気で愛嬌(あいきょう)がある」と表現。だが、数カ月前に会った理研関係者は「体に発疹が出ており、相当なストレスを抱えていたようだ。センターを辞めた方がいいと助言すると、明確には答えなかった」と振り返る。

 笹井氏は研究員に「自分の研究室がなくなるかもしれない」と漏らし、就職活動を勧めていた。「少しでも再就職に有利になればいいと思ったのだろう。熱心に論文を添削していた」とセンターの男性研究者。

 問題が発覚するまでは、次期センター長の有力候補の一人で、本人も意欲を見せていた。竹市センター長は「多くの批判を受け、精神的に耐えられなくなったのだろう。苦しかっただろうが、もう少し我慢してほしかった」と悔やんだ。(SANKEI EXPRESS

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