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経済
ソフトバンク 米携帯4位買収交渉白紙に 崩れた「3強構想」 世界戦略見直し
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Tモバイル買収の白紙で、世界戦略の練り直しを迫られているソフトバンク=2014年7月15日、東京都内で開かれた法人向けイベント(寺河内美奈撮影) ソフトバンクが子会社の米携帯電話3位スプリントを通じて進めていた4位TモバイルUSの買収交渉を白紙に戻したことが8月6日、明らかになった。市場の寡占化を懸念する米規制当局から承認を得るのが難しいと判断した。ソフトバンクは世界戦略の見直しを迫られる。
スプリントは業績回復が遅れる可能性が高まった。ソフトバンク関係者によると、買収交渉はいったん中断するものの、将来的には再開する可能性もある。
ソフトバンクは昨年(2013年)7月、約1兆8000億円でスプリントを買収。さらなる規模拡大に向け、Tモバイルの親会社である独ドイツテレコムと買収交渉を進めてきた。買収額は約320億ドル(約3兆3000億円)とされる。
Tモバイルに対しては、フランスの新興通信会社イリアドも7月末、総額150億ドル(約1兆5400億円)で買収を提案したと表明。ただTモバイルはイリアドの提案を拒否したとされる。ソフトバンクの事実上の買収断念を受け、イリアドが買収額を上積みする可能性もある。
6日の東京株式市場でソフトバンクの終値は前日比253円安の6972円となり、約2カ月半ぶりに7000円を割り込んだ。
≪崩れた「3強構想」 世界戦略見直し≫
ソフトバンク傘下の米スプリントが米TモバイルUS買収の交渉を中断することで、米携帯電話市場でベライゾン・ワイヤレスとAT&Tの2強への対抗軸を作るというソフトバンクの孫正義社長(56)のもくろみは崩れた。当面、スプリントだけを足がかりに、米国でのビジネス拡大を目指す。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)などは、スプリントが2007年からトップを務めてきたダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)を交代させると報じた。ロイター通信によると、後任にソフトバンク子会社で米携帯電話卸売り大手ブライトスターのマルセロ・クラウレCEOを指名する見通し。
スプリントは高速通信網の整備で出遅れ、顧客の流出に悩まされていた。ソフトバンク傘下に入ってからはコスト削減と通信網の拡充に力を注ぎ、今年4~6月期は最終損益が四半期ベースで約7年ぶりの黒字に転換した。
孫社長はスプリントとTモバイルを統合し、米国市場を3強体制に塗り替える戦略だった。だが、スプリントは当面、単独での通信網整備を余儀なくされ、設備投資の負担が重くのしかかることになる。
ソフトバンクはM&A(企業の合併・買収)で規模を拡大しながら成長を続け、2014年3月期には連結売上高や契約者の純増数で国内首位に立った。次に狙いをつけたのが米国市場だった。
6月の株主総会で、孫社長は「情報革命の分野で世界を変えてみせる。まず、米国に大きく参入したい」と発言。関係者によると、孫社長はこの数カ月間、月に何度も渡米し、現地の関係者に働きかけてきたが、規制当局の業界寡占化に対する恐れを払拭することはできなかった。業界関係者は「孫社長が米国をあきらめるはずがない。次の一手に注目している」と話している。(米沢文/SANKEI EXPRESS)