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経済
将来性に夢 ビットコイン人気再燃 関連ベンチャー続々「産声」
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ビットコインの業界団体「日本価値記録事業者協会」の設立について記者会見する、「クラケン」日本法人の宮口あやこ代表(左から2人目)ら=2014年7月4日、東京都千代田区・衆院第1議員会館(共同) 世界最大級の取引所だった「マウントゴックス」の経営破綻が大きな社会問題となり、日本では信頼を失った感のあるインターネット上の仮想通貨「ビットコイン」。しかし、新たな取引所をはじめとするビットコイン関連のベンチャー企業が今、続々と産声を上げている。危ういイメージがつきまとう仮想通貨に起業家がひきつけられるのはなぜか。
「調査中という説明が繰り返されるばかり。納得できない」。先月(7月)23日に開かれたマウントゴックスの債権者集会。2時間の長丁場を終えた直後に、20代会社員男性の債権者はこう吐き捨てた。
集会では破産管財人の確保する現時点の資産や負債が明かされた。だが、マウントゴックスが65万ビットコイン(BTC)や顧客から預かった最大28億円もの現金を消失した原因などについての説明はなく、分配額のめどもまったく未定のまま。不満が渦巻くのもうなずける。
しかし、そんなビットコインで一旗揚げようと、関連ビジネスに参入する企業が後を絶たない。4月にビットコイン交換所の「ビットフライヤー」、7月には決済技術を提供する「コインパス」が事業を開始。8月も米国企業と中国企業の合弁会社「ビットオーシャンジャパン」がドルと円とのビットコインの取引所を開始する予定だ。米取引所「クラケン」も日本法人を設立し、日本語の取引サイトの運営を近く始める。
「世界中から注文が来ており、会社の電話も鳴りっぱなし。投資したいというオファーもあります」。ビットフライヤーの加納裕三社長は手応えを語る。
外資系投資銀行から一念発起してこの世界に飛び込んだ加納社長は「ビットコインはここ10年で一番のイノベーション(革新)」と評価。ビットオーシャンジャパンの湯順平社長も「マウントゴックスに問題はあったが、ビットコインには問題はない」と言い切る。
彼らに共通するのはビットコインの将来性に対する多大な期待だ。国家の保障がなくても価値を持ち、安いコストで瞬時に資産を移動できる手段であるビットコインは、自国通貨に信頼が置けない国民にとっては魅力だ。投資家にとっては値動きの大きさが収益機会と映る。マウントゴックス破綻後に一時1BTC=400ドルまで落ち込んだ相場は足元で約580ドルに回復したのがその証左だ。
ビットコインの推計取扱高は昨年(2013年)2兆円と前年の数倍規模に膨れあがった。日本で信頼が揺らいでも、ネットを通じて顧客は世界各地にいる。実際、ビットフライヤーは右肩上がりで顧客が増え、この1カ月で顧客数は少なくても2倍になったという。
楽天の三木谷浩史(みきたに・ひろし)社長は7月に講演で「恐らく楽天も早晩ビットコインでお金を受け付けるようになると思う」と発言した。ベンチャーならずとも将来性に期待を高めている。
「関係者で手を組み、ポテンシャルをつぶさないようにしたい」。「クラケン・ジャパン」の宮口あやこ代表は月内にも発足するビットコインの自主規制団体の設立会見でこう語った。
利用者を保護したり、業者を規制したりして健全な発展を促す団体の設立を後押ししたのは政界の動きだ。自民党のIT戦略特命委員会小委員会は6月にビットコインの普及について、利用者の自己責任で容認すべきとの提案をまとめ、協会設立のきっかけになった。小委員会の福田峰之委員長は「アベノミクスの成長戦略はベンチャーを支援し、商売しやすい環境をつくるのがポリシー」と話す。
ただ福田氏らは、ビジネスが拡大したときには、今回見送ったビットコインについての規制の法制化を改めて検討する構え。国の関与が強まれば、ベンチャーが商機を見いだしている世界通貨としてのビットコインの魅力が色あせてしまうかもしれない。(万福博之/SANKEI EXPRESS)