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ブラジル 世界最大のジャングル 赤道直下に広がる「動物の王国」

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ブラジル 世界最大のジャングル 赤道直下に広がる「動物の王国」

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雨期(12~7月頃)は乾期に比べて水面が10メートルも上昇するため、ジャングルは水浸しに。その奥へ手漕ぎカヌーで入っていくと、めくるめくアマゾンの世界が広がる=ブラジル・アマゾナス州マナウス(谷口京さん撮影)  ジャングルからもたらされた有機物を含み、茶色く濁った水流がゆっくりと河口へ流れていく。ここは世界一の流域面積を誇るアマゾン川沿いにある都市マナウス。前を流れる水は、全世界の河川から海に流れ出す水量の約20%に及ぶといわれる。幅広の川面を、フェリーが緩慢なスピードで行き交う。船上から眺めれば、川岸では子供が川に飛び込んで水遊びに興じ、母親たちがおしゃべりしながら洗濯をしている。大いなる自然のリズムに合わせるように、そこで暮らす人々の生活もどこかのんびりしていた。

 河口から約1500キロ遡(さかのぼ)ったところにあるマナウスから、さらにフェリーで3日間ほど奥地へ行くと、マミラウア自然保護区がある。保護区内では、シラサギの家族が水面ぎりぎりを優雅に滑空し、ピンクイルカが気まぐれに一瞬だけ水面に背びれを見せては水中に潜り込んでいく。その自由な振る舞いを見ていると、ここが動物たちの楽園だと改めて気がつく。

 真上から降り注ぐ太陽の光を受けたボートがさらに進むと、水上に浮かぶコテージが見えてくる。マミラウア・ウアカリ・ロッジは、観光客が唯一滞在できる施設。ガイド付きジャングルツアー、食事、宿泊までがすべてパッケージになっている。

 「動物の王国へようこそ。さっそくだけど、午後は地元に暮らすガイドと一緒にカヌーで散策に出かけるわよ」。フレンドリーなスタッフに迎えられ、手付かずの大自然に囲まれた時間が始まった。

 ≪目の前で展開するアマゾンの宇宙観≫

 カヌーでジャングルの中へ入っていくと、様子が一変する。陽が射さず薄暗い空間では、絡まりあった樹々や蔦が上へ上へと伸びていく。朽ち果てて倒れた木からは新しい木が生え、そこにタランチュラがじっと動かずへばりつき、隣では真っ赤な花が咲き乱れている。

 人間の手がいっさい加わらない自然の世界では、すべてのものがつながり、生と死が混ざり合い、輪廻(りんね)転生を繰り返しているよう。遠くからは、強い風が吹いているような音が聞こえてきて、嵐が近づいてきたのかと錯覚する。「あれはアカホエザルの鳴き声だよ」。地元ガイドが種明かしをしてくれた後も、その不思議な声は、別の世界から鳴り響いているような気がした。

 午後の太陽が傾き始めてから、マミラウア湖に沈む夕日を見るために、ボートで1時間ほど西へ移動する。空がだんだんと群青色に染まっていく頃、完全にないだ静かな水面に太陽がゆっくり沈んでいった。その直後、沈んだはずの太陽の光が放射状に湖面に広がっていく。アマゾンの天空ショーは5分ほど続いた後にふわりと消えた。少しずつ暗闇が濃くなっていくと、今度は東の空に星が瞬き始める。完全な静けさのなかで、星が湖面に映り込む――。

 こんな長い時間、空を見つめたのは何年ぶりだろう。いつの間にか満月を迎え入れ、ジャングルはこうこうと照らされている。太陽と月と星と地球がつながりあっている。アマゾンの宇宙を目の前にして悠久の時に身を委ねていると、そんな思いがすっと心に入ってきた。(季刊誌「TRANSIT」 森川幹人/撮影:フォトグラファー 谷口京/SANKEI EXPRESS

 ■季刊誌「TRANSIT」 世界中のさまざまな風景と、ファッション・食・音楽などのカルチャーを、“旅”というフィルターを通して紹介する雑誌です。現地取材に基づく美しい写真とリアルな文章で旅先の素敵な空気感をお届けします。SANKEI EXPRESSでは「TRANSIT」の特集の一部をご紹介します。

 【ガイド】

 ■季刊誌「TRANSIT」(25号、euphoria FACTORY(ユーフォリアファクトリー/講談社、1850円(税込み))。<特集>美しきブラジル。

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