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マリアム・ミルザハニさんに女性初フィールズ賞 イランの才女 数学界変えた
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韓国・首都ソウル 国際数学連合は、数学のノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞の受賞者に、女性で初となるイラン出身のマリアム・ミルザハニ米スタンフォード大教授(37)ら4人を選び、韓国ソウルで始まった国際数学者会議で8月13日、発表した。フィールズ賞は、1936年の設立以来、これまで52人が受賞したが、いずれも男性だった。イラン人の受賞も初。
ミルザハニさんは77年生まれ。世界の高校生らが実力を競う国際数学オリンピックで、94、95年に連続で金メダルを獲得し、「イランの天才少女」と呼ばれた。テヘランのエリート校のシャリフ工科大で学士号を取得、2008年に31歳の若さで米名門スタンフォード大の教授に就いた。
曲面の幾何学、力学系が専門で、形や大きさが刻々と変化するような「モジュライ空間」で考える曲面上を物体が動くとき、どのような軌道を描くかについて、いくつかの斬新で重要な発見をしたことが評価された。受賞を受けて、ミルザハニさんはスタンフォード大のウェブサイトに「(受賞は)大変名誉なことで、若い女性の科学者、数学者に少しでも勇気を与えることができたらうれしい」とつづった。
08年11月に英オックスフォード大数学研究所が公開したインタビュー記事によると、読書好きだった彼女の子供の頃の夢は小説家になること。ところが、科学好きだった兄が読んでいた雑誌で、ドイツの数学者、ガウスの公式の一つを見て、その美しさに魅了されてしまう。彼女は「自分でその問題は解けなかったけど、数学の美しさを初めて知った瞬間だったわ」と答えている。
テヘランで通った高校は本屋が軒を連ねる通りの近くにあり、登下校の際に友達とありとあらゆる種類の本を読みあさった。学ぶ意思のある女性には男性並みの教育機会を提供しようという校風も、数学への好奇心を伸ばす環境を提供した。
彼女にとって何より幸運だったのは、祖国イランとイラクが戦ったイラン・イラク戦争が1988年に終結したことだ。「私が小学校を卒業した年に戦争が終わった。あと10年早く生まれていたら、十分な教育機会は得られていなかったと思う」
彼女をよく知る藤原耕二京都大教授(幾何学)は、「ミルザハニさんは驚異的な計算力を使って新しい公式を発見したり、理論物理など別の分野との意外なつながりを見つけたりするなど、画期的な研究を続けている。本人の印象は、小柄だがエネルギーの塊という感じ。聡明で気さく、バランスの取れた素晴らしい人だ」と語る。
欧米では、彼女の受賞を機に男性優位の数学界が、女性の活躍できる世界に変わることの意義を強調する報道が目立つ。ミルザハニさんも思いは同じだ。大学のウェブサイトに寄せたメッセージをこんな予言で締めくくった。
「数年以内に同じような賞を取る女性がもっとたくさん出てくると私は確信しています」(SANKEI EXPRESS)