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社会
全国学力テスト 224万人が参加 成績公表、「序列化招く」「格差縮小」
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東京都内の小学校で行われた全国学力テスト=2014年4月22日午前(原田史郎撮影) 小学6年と中学3年を対象にした文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が4月22日、一斉に行われた。昨年(2013年)に続く全員参加方式で、約224万1000人が国語と算数・数学の問題に取り組んだ。
文科省によると、参加したのは小学校2万395校の約112万3000人と中学校1万248校の約111万8000人。国立と公立は全校参加で、私立も半数近い47%が参加した。
出題は基礎知識をみるA問題と、知識の活用力を測るB問題に分けられ、生活習慣などを聞くアンケートも行われた。教育委員会や学校現場が子供の学力傾向を把握し、授業の改善などに役立てる狙いがある。
文科省が採点を行い、8月ごろに都道府県別の成績などが公表される。今回からは一定の条件のもと、市町村教委の判断で学校別の成績を公表することも可能に。都道府県教委も市町村教委の同意があれば、市町村別や学校別の成績を公表することができ、各教委の対応が注目される。
今回のテストは、過去のテストで正答率が低かった分野が重点的に出題されたほか、身近な題材から思考力を試すような問題が多数出された。国際学習到達度調査(PISA)などで知識の活用力や表現力が重視されていることも、出題傾向に反映しているようだ。
文科省では「保護者らへの説明責任を果たすことも大切。各教委は公表のあり方を含め、適切に対応してほしい」としている。
≪成績公表、「序列化招く」「格差縮小」≫
全国学力テストは今回から教育委員会の判断で、学校別、区市町村別の成績を公表できるようになるが、序列化を招くとして公表に消極的な教委も多い。学力向上を目指す教育施策に保護者らの関心が高まる中、説明責任を果たすための工夫と積極性が各教委に求められている。
全国学力テストはこれまで、学校別成績はその学校のみが公表でき、区市町村教委が一律に公表することは禁じられていた。しかし、教育改善に積極的な自治体の首長から「地域への説明責任が果たせない」と公表を求める声が上がり、文科省は昨年(2013年)11月、(1)順位付けは行わない(2)改善策なども併せて公表する(3)事前に学校側と十分相談する-などの条件を付けた上で、区市町村教委が学校別成績を、都道府県教委が区市町村別成績などを、それぞれ公表できることにした。
成績公表で期待されるのは、下位校で教育改善が進み、学力の地域格差が縮小することだ。国立教育政策研究所によれば、国による都道府県別の公表によって下位県に改善が見られ、例えば小学国語、算数の正答率が全国平均より5%低い県が2007年度調査では延べ4県あったのに対し、13度調査はゼロに改善。「成績を公表することで保護者らの関心が高まり、各教委も教育改善に本腰を入れるようになる」(国立教育政策研究所関係者)という。
だが、教委の多くは学校別公表に消極的だ。文科省が昨年(2013年)7月に実施した調査では、都道府県教委の4割以上が学校別の成績公表に前向きな半面、区市町村教委の8割近くが否定的な見解を示していた。現時点でも「数値の公表は序列化を招き、小規模校では個人が特定される」(長野市教委)、「数値を出すことに懸念を示す声もあり、丁寧な検討が必要」(静岡県三島市教委)など、慎重な意見は少なくない。
一方、公表に前向きな教委からは、保護者らに情報開示することで、地域ぐるみで教育改善を進めようとする姿勢がうかがえる。市町村別成績を公表する方針の大分県教委は「県独自の学力テストで数値を含めて公表しているが、過度な競争などの悪影響はない。市町村が取り組む教育施策の好事例を、保護者を含め県全体で共有したい」と強調する。
学校別公表を決めている佐賀県武雄市教委も「学力向上には学校だけでなく家庭、地域との連携が必要。学校別公表は、市ぐるみで教育を考える機会になる」と期待する。
このほか三重県教委や茨城県教委なども、公表を視野に今後の対応を検討する方針だ。「市町村教委の同意を得た上で、課題を改善した学校の取り組み例などを紹介したい」(茨城県教委)としている。(SANKEI EXPRESS)