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ハラルでおもてなし 16億人ムスリム観光客開拓
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アラブ首長国連邦ドバイから東京都台東区の浅草寺を訪れたイスラム教徒の観光客=2014年7月、東京都台東区(共同) 東南アジアや中東など世界人口の4分の1、約16億人のムスリム(イスラム教徒)の観光客を増やそうと、日本各地の空港や飲食店、ホテルなどで戒律に従った食事の提供や礼拝場所の整備が加速している。国も2020年の東京五輪に向けて支援を強化。官民挙げての「おもてなし」が進みそうだ。
「日本では食事が難しいと聞いていたけど、ハラルの天ぷら店を見つけて驚いたわ」。8月初旬、北海道への旅行の途中で成田空港に到着したインドネシア人会社員、クスマさん(25)がほほ笑んだ。
ハラルはアラビア語で「許されたもの」という意味。イスラム教で摂取が禁止されている豚肉やアルコールを含まない食品などがハラルとなる。
成田空港では6月、グルメ杵屋(大阪市)のうどん店と天ぷら店が、マレーシアの機関からハラル認証を受けた料理の提供を始めた。「酒類の保管場所を調理場から隔離し、調味料や油からはアルコールと豚由来の成分を避けた」という。
礼拝場所については成田空港が7月に拡充したほか、羽田や中部、関西空港にも広がっている。
日本政府観光局(JNTO)によると、近年の査証(ビザ)発給緩和の動きを受け、ムスリムが大多数のマレーシアとインドネシアからの観光客は13年、前年比約5割増の計約24万人に達した。1人当たりの消費額も11万~12万円で、韓国や台湾、香港よりも多い。
山田洋・JNTO観光情報戦略室長は「親日的で市場拡大の可能性が高い」と期待する。
ムスリムを受け入れる裾野も広がっている。ホテルスプリングス幕張(千葉市)は礼拝用マット付き宿泊室、御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県御殿場市)も礼拝室を設けた。ルスツリゾート(北海道留寿都村)はハラル食を用意。割烹(かっぽう)やま(さいたま市)、京料理の美濃吉(京都市)など本格的なハラル和食を提供する料理店も増加している。
安倍晋三政権も6月の関係閣僚会議で「ムスリムおもてなしの姿勢」を決定、情報発信やビザ発給緩和で支援する方向だ。自治体での関連セミナーも相次いでいる。
原油高で潤う中東産油国にも目が向き始めている。北海道は6月、湾岸アラブ諸国の駐日大使を招き魅力をPR。京都市もアラブ首長国連邦ドバイに観光客誘致のための拠点を設け、地ならしに余念がない。
東京・浅草の浅草寺を家族8人で訪れていたドバイの公務員アブドラ・ドカンさん(53)は「欧米旅行は飽きた。日本は清潔で美しい」。22日間の旅行費は約680万円で、富士山や京都にも興味がある。ただ「ハラル食が広がっているというが、場所が少ない。毎日、白米と果物ばかりだ」と苦笑いし、さらなる環境整備を求めた。(SANKEI EXPRESS)