SankeiBiz for mobile

【STAP細胞】序盤でつまずき 万能性確認できず 検証実験中間報告

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

【STAP細胞】序盤でつまずき 万能性確認できず 検証実験中間報告

更新

STAP現象の検証の中間報告が行われたが、現時点では「検出できていない」の一点張りだった=2014年8月27日午後、東京都墨田区(大橋純人撮影)  STAP細胞が存在するかを確かめる理化学研究所の検証実験は、初期段階で大きくつまずいた。8月27日に公表された中間報告では、開始から約4カ月たっても細胞を作製できず、存在を肯定する成果は出なかった。理研は「白黒つける」として来春まで実験を続けるが、存在の証明は現時点では難しい状況だ。

 「接着」半分以下

 STAP細胞は、マウスの体の細胞を弱酸性の溶液に浸すだけで作製できる新型の万能細胞とされた。小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏らが発表したSTAP論文(撤回済み)の作製法では、まず酸性溶液に浸した細胞で、万能性の指標となる遺伝子が働いているかを調べた。

 検証チームはこれに沿って、万能性の遺伝子が機能すると細胞が緑色に光るよう遺伝子操作したマウスを用意。生後1週間のマウスの脾臓(ひぞう)からリンパ球を取り出し、酸性溶液に浸して細胞が光るか観察した。

 22回の実験の結果、光る細胞は一部で見られたものの、万能性遺伝子が働いたことを示す特徴は確認できなかった。発光したケースでは緑色だけでなく、遺伝子の働きでは見られない赤色の光を含んでおり、細胞が自然に発光する別の現象が起きた可能性が高い。

 万能性遺伝子の働きが確認できなければ、その先の実験に進めない。検証は序盤から難航し、細胞の存在は不透明さを増している。STAP細胞は作製過程で細胞が集まり、くっついて塊になるとされた。しかしこの接着現象も、全実験の半分以下でしか観察できなかったという。

 論文では、今回の検証で使用したマウス系統だけでなく、別系統を掛け合わせたマウスも使っていた。検証では準備の容易な系統から実験を進めたが、理研は「遺伝的な違いが結果に影響した可能性もある」としており、今後は掛け合わせたマウスでも作製を試すという。細胞の存在については、現時点では分からないとしている。

 今後の実験で万能性遺伝子による発光が仮に確認されても、それだけでSTAP細胞が存在するとはいえない。万能性を証明するには、この細胞を別のマウスの胚(受精卵)に移植し、生まれてきた胎児の全身組織に分化していることも確認する必要がある。論文より厳密な手法での実験も並行して実施する。

 「ない」証明困難

 一方、小保方氏は理研チームとは別に、独立して検証実験を行う。4月の会見で「作製にはコツがある」と話しており、論文に沿った手法で自ら証明できるか注目される。現在は準備中で、作製の実験はまだ開始していないという。

 理研チームがこのままSTAP細胞を作製できなかった場合でも「存在しない」と科学的に結論付けることはできない。「ある」ことは証明できても、「ない」ことの証明は難しいからだ。理研幹部は「小保方氏が作製できなければ、ないとの結論になる」と話す。理研が小保方氏の検証実験を6月末に急遽(きゅうきょ)、容認したのは、細胞が存在しないことを前提にした動きとの見方もある。(SANKEI EXPRESS

 ≪理研、再生研の規模半減へ 名称も変更≫

 STAP論文の不正問題をめぐり、組織の見直しを進めている理化学研究所は8月27日、研究不正の再発防止に向けた改革計画を発表した。小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究ユニットリーダーが所属する発生・再生科学総合研究センター(神戸市)は「解体的な出直し」として規模を半分程度に縮小し改組。幹部を一新し名称も変更する。

 センターは外部有識者からなる改革委員会が6月に発表した提言で「研究不正を誘発する構造的な欠陥」を指摘され、早急な解体と竹市雅俊センター長ら幹部の刷新を求められていた。

 改革計画では、センターは固定化した運営体制が長期間続き、構造疲労を起こしたと分析。発生・再生科学の国際研究拠点として存続させるが、運営主体の幹部研究者(グループディレクター)会議を9月中に廃止。外部有識者を交えた運営会議を新設する。

 11月中に「多細胞システム形成研究センター」(仮称)に名称を変更。雇用は確保するが、研究プログラムの廃止や他のセンターへの移管などで研究室を現状の約40から半減する。

 一方、今秋にも世界初の臨床応用に乗り出す人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った網膜の再生医療は強化する。

 竹市センター長の後任は、海外の研究者も含む委員会が国際的に選考し、年度内に交代。決定までは外部からセンター長補佐を登用、改革を推進する。

 このほか、理研全体では野依良治(のより・りょうじ)理事長直轄の研究コンプライアンス本部や、過半数が外部有識者の経営戦略会議を新設。研究倫理教育の徹底など不正防止策の構築やガバナンス(組織統治)の強化に取り組んでいく。

 野依理事長は27日、下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相に報告書を手渡し、「改革を確実に実行し社会からの信頼回復に全力を挙げる」と述べた。(SANKEI EXPRESS

ランキング