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政治
高まるインド投資熱 難題は環境整備 モディ首相、随所で親日家ぶり発揮
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日本のインドへの直接投資額と進出日系企業数(2005年~2013年)=※出典:外務省 日本とインド間の経済協力が新局面を迎えている。1日の首脳会談で安倍晋三首相(59)は今後5年間でインドに官民で3.5兆円の投融資を実施することを表明。インドのナレンドラ・モディ首相(63)は2日に都内で開催された講演会に出席し、日本企業に積極的な投資を呼び掛け、日印の新たなビジネスパートナーシップをアピールした。両国政府の蜜月ぶりを背景に、日本企業の進出熱はさらに高まりそうだが、土地取得の難しさや複雑な行政手続きなど課題も横たわっている。
「Come Make in India(インドにきて生産してほしい)」
モディ首相は講演会で、日本の製造業にこう投資を呼び掛けた。人口12億人の巨大市場や高度な人材に加え、アフリカや中東など「さらに西側の世界に輸出できるのが強み」と地理的な優位性を強調。日印で新たな協力関係を構築し「世界で奇跡を起こしたい」と訴えた。
具体的な投資分野として、計画が相次ぐ地下鉄向け信号システムや携帯電話など電子部品、太陽光など再生可能エネルギー、ITで環境や省エネを実現するスマートシティーを挙げた。
5月に就任したモディ首相には、日本から優れた技術や投資を呼び込み、年5%台で低迷する経済成長を8%前後に回復させたい狙いがある。
安倍首相も1日にインドに対する直接投資や進出企業数を倍増させる考えを示し、この期待に応じた。円借款によるインフラ整備や、日本貿易振興機構(ジェトロ)が今秋にも分譲するラジャスタン州の日系向け工業団地を念頭に、インドが進める電子産業育成への支援も表明した。
三井物産の飯島彰己社長(63)は、モザンビーク沖ガス田でのインド国営の天然ガス公社(ONGC)との共同開発を例に挙げ「地域のエネルギー安定供給に貢献したい」とエネルギー協力の重要性を強調する。
今回の首脳会談で蜜月を演出した両国政府だが、課題も横たわる。ジェトロの野口直良ニューデリー事務所長は「インドには、土地収用の難しさや多発するストライキ、複雑な行政手続きなど投資環境の未整備などの問題がある」と指摘する。
実際に電機メーカーや大手商社は「州政府の権限が強く、工業団地や発電所建設に取り組もうにも地方政府トップがGOサインを出さないと土地収用も何も進まない」と嘆く。投資に難題が立ちはだかっているのが実情だ。
経済産業省は、タミル・ナドゥ州と政策対話を通じて日系のニーズに応じた投資環境の改善に布石を打つが、今後は同様の枠組みを他州に広げられるかも焦点だ。
モディ首相は講演で「ビジネス環境の改善のために何が必要か持って来てくれればそれを解決したい」と環境改善に前向きな姿勢を強調した。(上原すみ子/SANKEI EXPRESS)
≪モディ首相、随所で親日家ぶり発揮≫
来日中のインドのモディ首相は2日、民主、公明両党の党首との会談や講演をこなし、予定していた全日程を終えた。滞在中は、安倍晋三首相と3日間にわたり計7時間余も一緒に過ごし、日印の結びつきを強くアピールした。
民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(65)と会談したモディ氏は、自身の所属するインド人民党(BJP)が10年間の野党暮らしを経て与党に復帰したことを踏まえ「民主党は今は野党だが、将来の政権奪取に向けて頑張ってほしい」と激励した。公明党の山口那津男(なつお)代表(62)とは、両国の議員交流を促進することで一致した。
モディ氏の親日家ぶりは、迎賓館で1日夜に開かれた首相との夕食会のスピーチでも発揮された。
極東国際軍事裁判(東京裁判)で判事を務め、被告全員の無罪を訴えたパール判事の話題に触れ、「インド人が日本に来てパール判事の話をすると尊敬される。自慢できることだ。判事が東京裁判で果たした役割はわれわれも忘れていない」とその功績をたたえた。(SANKEI EXPRESS)