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【取材最前線】白寿を迎えた日印の生き証人
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インド・首都ニューデリー ジャワハルラル・ネールとチャンドラ・ボース。インドの初代首相と独立運動家としてそれぞれ知られるが、この英雄2人と面会した日本人がいる。
三角佐一郎氏。長らく財団法人・日印協会の専務理事を務めた。先日、彼の99歳の白寿を祝うパーティーが東京都内であった。インド大使館や日印協会の関係者のほか、日本人や在留インド人の知人ら80人を超える面々がお祝いに駆けつけた。
話題になったのが、やはりインドの両雄と会ったときのこと。1943年、ボースが来日した際、泊まっていた帝国ホテルで表敬訪問したのだという。
「彼とは握手にならないんだ。だって、いきなり身体を引き寄せて抱きついてくるんだから」。そして背中をポンポンとたたかれ、こう言われたそうだ。「お互い、アジアのために頑張ろう!」
熱烈なあいさつをするボースと対照的なのが、ネールだった。
「握手のときは手を握らせてあげるという感じ。手を差し出しているだけで、決して握り返してこないんだね」
戦後、敗戦国の日本に鉄鉱石を輸出しようという国家がなかったころ、対日輸出を決断したのが、そのネールだった。まな娘と同じ「インディラ」と名付けたゾウを、日本の子供たちにプレゼントしたのも彼である。
ちょうど、インドでは先に行われた総選挙で最大野党のインド人民党が10年ぶりに政権を奪還、ナレンドラ・モディ氏が首相に就任したばかりだ。親日家とも伝えられる。
今後の日印関係はどうあるべきか。三角氏は「インドという、たいへん奥の深い国とかかわりをもち、日本にインドを、インドに日本を知ってもらおうと思って頑張ってきた」とあいさつ。両国関係については「昔は互いに好意だけはもっていた。でも、理解が足りなかった」とした上で、「文化的にも経済的にももっと協力した方がプラスになる」と語った。
出席者からは、「三角さんは日本とインドの歴史の証人であり、日印関係のシンボルだ」などの声が上がった。彼がともした「たいまつの火を後生につないでいかないといけない」。そんな日印新時代に向けた熱い思いが飛び交った。(外信部 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)