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経済
グーグル自動運転車…雨雪の日は走れず 鈍感センサー、地図頼り…多数の欠点
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米グーグルが2017年の実用化を目指し5月に試作車を公開した完全自動運転車について、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が発行する科学雑誌が2日までに、「大雨や雪の降る日は走行できない」とする分析リポートを掲載した。
周囲の状況を把握するセンサーの感度が鈍く、大粒の雨や雪を障害物と判断し動けなくなってしまうという。
また地図データに頼りすぎているため、未入力の状況に遭遇すると、立ち往生してしまうとも指摘した。グーグル側は多数の欠点を認めた上で、改善可能としているが、安全性を疑問視する声は強く、実用化が遅れるのは避けられない状況だ。
「(米国の)国土の99%で走行できない自動運転車を、あなたは購入しますか?」
こんな書き出しで始まるリポートを掲載したのは、8月28日に発売された「MITテクノロジーレビュー」。1899年に創刊された権威ある隔月発行の科学誌で、そのリポートの信頼性は高い。
グーグルが公開した試作車はハンドルもアクセルもブレーキもなく、スマホの専用アプリで目的地を入力しボタンを押すだけで、そこに連れて行ってくれる夢の完全自動運転を実現した。パトカーのサイレンのように天井に取り付けられた電子センサーで360度全方位を監視し、約180メートル先の人や物を感知し事故を回避する。
ところが、MITの分析結果では、このセンサーは大きな雨粒や雪粒を障害物と判断し、走行できなくなるとした。また、道路に転がる石としわだらけの紙の区別がつかず、歩行者は「ぼんやりした円柱」としてしか識別できないと結論付けた。日差しが強い日は信号を見落としてしまうという。
グーグルはこれまでの市街地での走行実験などを踏まえ、「警察官の手信号など数百の事象を同時かつ正確に識別できる」としていたが、リポートは「交通事故などが発生し、警察官が手を振って停止させようとしても無視して走り去ってしまう」と分析した。
また目的地までの走行は地図データへの依存度が高いが、全米のほとんどの地域では完全自動運転に耐えうる詳細なデータが存在しないと指摘。データ作成のため、道路標識や信号、電柱といった膨大な道路情報を集める必要があると分析した。
さらに道路工事や路面に開いた穴などデータに未入力の突発事象には対応できないとしている。
米カリフォルニア大バークレー校の交通研究所のスティーブン・シェラドバ研究員はリポートの中で、「グーグルは技術的な問題を解決したと考えているようだが、(問題は)そう単純ではない」と警告した。
これに対し、グーグルの自動運転車プロジェクトの責任者クリス・アームソン氏は、これらの欠点を認め、雪粒への対応など、順次改善に着手していると説明。
その上で、11歳の息子がカリフォルニア州で普通自動車の免許が取れる16歳になる5年後には自動運転車を実用化させる考えを示し、「これは私の個人的な期限だ」と語った。
グーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏はこれまで3年後の2017年の実用化を明言しており、現場責任者が2年の遅れを認めた格好だ。(SANKEI EXPRESS)