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政治
選手強化急ぐ 鉄道新線構想も続々 2020年東京五輪決定から1年
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東京五輪・パラリンピックの選手村建設予定地。東京は五輪で大きく変貌する=2014年7月23日午後、東京都中央区晴海(本社チャーターヘリから、川口良介撮影) 2020年東京五輪・パラリンピックの招致決定から8日で1年。国内外の注目が集まる世紀のイベントだけに、スポーツ界は金メダルの大幅な獲得増を目指し選手強化を急いでいる。費用高騰から会場計画はスリム化の方向で調整が進む一方、首都の鉄道を変貌させる新線構想が次々と浮上している。
「大会の成功には日本選手団の活躍が欠かせない」。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和(つねかず)会長は、20~33個の金メダルを獲得し世界3位に入る目標を設定した。前回の12年ロンドン大会は金7個。16年のブラジル・リオデジャネイロ大会をステップに大幅増を狙う。国には五輪までの6年間で1000億円以上の選手強化費を要望した。
JOCは14年度から、寄宿制でジュニア選手を育成する「エリートアカデミー」に射撃と水泳の飛び込みを加え、5競技に事業を拡大した。文部科学省も14年度に、16~20歳の有望選手を重点強化する新プロジェクトに13億7000万円を充て、競技団体を支援している。
日本で開催される五輪という大きな目標に、選手の目の色も変わった。体操男子床運動の世界選手権王者、18歳の白井健三選手(神奈川・岸根高)は「東京五輪は23歳といい年齢で迎えられる。チームを引っ張っていけるように頑張る」と意気込む。
一方で、会場計画の見直しも進んでいる。建設需要の高まりで整備費は高騰。舛添(まずぞえ)要一知事は五輪後に利用されず、負の遺産となりかねない会場を見直す考えだ。
知事は環境への配慮から葛西臨海公園(江戸川区)のカヌー会場を隣接都有地に移転することを表明した。1日の都議会特別委員会では、本年度に基本設計を予定する6会場のうち、バドミントン、バスケットボール、セーリングの3会場は新設せずに既存施設の利用検討が報告された。
大会の準備や運営全般を担う大会組織委員会は当初50人ほどの所帯だったが、最終的には3000人規模に膨らむ見通し。来春にも港区の超高層複合ビル「虎ノ門ヒルズ」に移転する予定だ。
五輪をにらみ、都心には鉄道新線の構想が続々と浮上している。ただ、巨額の費用を要するため、実現には国や都の出資は必須とみられている。
JR東日本は東京、新宿、新木場の各駅方面と羽田空港を結ぶ構想を発表。新木場のルートは沿線に五輪会場があり、暫定駅を設け五輪開催前の開業を検討している。
成田空港から京成が乗り入れる押上駅と、羽田から京浜急行が乗り入れる泉岳寺駅の約11キロをつなぐ「都心直結線」は国土交通省が計画。実現すれば成田、羽田両空港が直結することになる。地下にカーブの少ないルートを選び建設、時速160キロ超の運転を目指す。
羽田空港と浜松町との間を結ぶ東京モノレールは、路線をJR東京駅まで延伸することを検討している。
≪全国自治体、合宿誘致に熱 福島「Jヴィレッジ使って使って≫
世界的な祭典の活気を地元に呼び込めるか-。東京五輪・パラリンピックに向け、全国の自治体が海外チームの事前合宿誘致に動き出している。
40を越える市町村が名乗りを上げているのは北海道だ。東京五輪の開幕は7月24日。直前の調整場所として、涼しい気候はアピールポイントになる。
士別市は練習環境を整備する。今年度中に低酸素トレーニング室を500万円で新設するほか、大会本番までにウエートリフティング場も改修する構想だ。岩見沢市はパラリンピックの8種目に絞って誘致を目指す。2月に北海道教育大岩見沢校に完成したバリアフリーの体育館が後押しとなっており、海外PR用として、すでに市の紹介ビデオも作成した。
東日本大震災で被災した東北3県は7月の組織委員会との会合で、合宿誘致への協力を要望した。福島県は県内施設と市町村の意向を調査。現在、福島第1原発事故の対応拠点となっているサッカー「Jヴィレッジ」も19年には本来の姿に“復活”させる計画で、担当者は「復興のシンボルになる。海外選手に使ってもらって風評被害を払拭したい」という。
各候補地と、各国際競技連盟や各国オリンピック委員会の要望のすり合わせのため、組織委は16年リオデジャネイロ五輪後に相互への情報提供を本格化させる方針だ。(SANKEI EXPRESS)