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政治
災害公営住宅 建設加速へ「支援隊」 政府創設 遅滞要因の解消狙う
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災害公営住宅の建設現場で、説明を受ける安倍晋三(しんぞう)首相(左から3人目)。岩手、宮城、福島の3県では、いまだに約9万人もの被災者がプレハブ仮設住宅での生活を余儀なくされており、工事の加速化は喫緊の課題だ=2014年7月2日、岩手県上閉伊郡大槌町(共同) 政府は東日本大震災の被災自治体が進める災害公営住宅の建設を後押しするため「工事加速化支援隊」を創設することが8月18日、分かった。
大規模な建設プロジェクトに精通した人材を近く派遣し、被災自治体が抱える工事の遅滞要因を探り出し、解消するのが狙い。仮設住宅で暮らす被災者が早く災害公営住宅に入居できるよう「住まいの復興」をさらに前進させる。
支援隊は、復興庁や国土交通省などから区画整理や大規模建設事業に必要な専門資格を有するメンバーを選び出し、8月中に20~30人規模で発足させる。根本匠(たくみ)復興相(63)が直接指揮を執る〝直轄部隊〟で、災害公営住宅の事業主体である県や市町村が定める建設目標を達成できるように、個別事情に応じたきめ細かい支援を行う。
一部の被災自治体では、災害公営住宅建設のための区画整理や工事に伴う調査・設計などに精通した人材が不足していることが、災害公営住宅建設の停滞を招いているとの指摘がある。
そのため政府は、自治体レベルでは難しい大規模建設事業に精通した支援隊を現地に送り込み、被災自治体や施工業者とともに現状の問題点を洗い出し、早期完成に向けた対応策を検討、実施していく方向だ。
支援隊の創設は、災害公営住宅の建設用地取得を促進するため、2月に発足した「用地加速化支援隊」に続く措置。災害公営住宅の用地取得と建設を連結させることで、切れ目のない支援策としたい考えだ。
≪「住まいの復興」に向けた起爆剤に≫
政府は、災害公営住宅の建設を促進させる工事加速化支援隊を、「住まいの復興」の早期実現に向けた起爆剤と位置付ける。復興庁の調査では、建設用地の取得率が大幅に上昇していることから、災害公営住宅の建設を一気に軌道に乗せたい考えだ。
災害公営住宅建設をはじめとする防災集団移転促進事業に伴う用地取得率は、2014年6月末で岩手、宮城、福島の被災3県の合計で84%に上り、13年9月の49%から大幅に改善した。用地取得に向けた制度の簡素化や土地収用制度の活用など、矢継ぎ早に用地取得の加速化措置を実施した結果といえる。復興庁幹部は「住まいの復興は用地取得から住宅の完成、被災者の入居へと着実に進展している」と説明する。
しかし、13年度の復興関連予算の「執行率」は64.7%にとどまり、一部で復興の遅れが指摘されている。着工前の契約済み事業や契約見込みの事業を織り込んだ事実上の未執行率に当たる「不用率」は、13年度で9.2%と前年度比で3ポイント改善しており、政府関係者は「会計上の数字に表れない数値もある」(政府関係者)と反論するが、実際の着工が欠かせない。
さらに、災害公営住宅の建設に必要な建設資材や人材の確保が今後の深刻な課題となってくる。復興庁は入札方式の見直しなどにより改善を続けるが、20年の東京五輪開催に向けて需要が高まれば、東京へ資材や人材が流出してしまうリスクも強まる。
政府・与党は10月の福島県知事選や来春の統一地方選をにらみ、目に見える形での復興を実現させたい考えだ。安倍晋三首相(59)は第2次政権発足から17回も被災3県を視察し、被災者の声に耳を傾けてきた。その声を反映させるためには、乗り越えるべき課題は多い。
≪仮設暮らしなお9万人≫
東日本大震災で大きな被害に遭った岩手、宮城、福島3県のプレハブ仮設住宅の平均空室率が7月にいずれも約2割に達した。発生から約3年5カ月がたち、建て直した自宅や災害公営住宅に移り住む人が、徐々に増えてきたためだ。一方、移転先の宅地造成や、災害公営住宅の整備は遅れ、今なお3県で約9万人がプレハブ仮設住宅に暮らす。
建設直後の入居が始まった時期を除いて、3県全てが2割になるのは初めてで、移転先整備がなかなか進まない中、仮設住宅団地の撤去・再編が本格化するのは確実。退去や別の団地への転居で地域のつながりが絶たれかねない人や、住民の減った仮設に取り残された弱者への支援が重要性を増す。(SANKEI EXPRESS)