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生態系守れ 世界最大の海洋保護区 ハワイ南方の太平洋 米、面積6倍に拡大
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米国が設定した世界最大の海洋保護区のイメージ=2014年9月25日現在 バラク・オバマ米大統領(53)は25日、ハワイ南方の太平洋に点在する7つの島やサンゴ礁の周囲に設定している海洋保護区の面積を、これまでの6倍の約127万平方キロに拡大する布告に署名した。手つかずのサンゴ礁や豊かな生態系を人間活動の影響から守るのが目的で、この海域では商業目的での漁や資源の採掘が全面的に禁止される。保護区の領域は日本の国土面積の3倍を超え、ホワイトハウスによると、「世界最大の海洋保護区」になるという。
拡大されるのは、(1)ウェーク島(2)ハウランド島(3)ベーカー島(4)ジョンストン環礁(5)キングマン岩礁(6)パルミラ環礁(7)ジャービス島-などから成る「太平洋離島海洋ナショナル・モニュメント」の海洋保護区。
AP通信によると、この海域には130以上の深海山脈があり、数千年を超える深海サンゴなど、希少で壊れやすい生態系が存在している。何百万ものウミガメや海生哺乳類がこの海域をエサ場として生息しているという。
サンゴなどの貴重な生態系は、温室効果ガスによる海洋の酸性化に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。オバマ政権は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が急増して起きる海洋酸性化で、周辺のサンゴの成育に影響が出る事態を懸念しており、海洋保護区の拡大は国連気候変動サミットがニューヨークで開かれているタイミングを狙ったものとなった。
この海域に海洋保護区が設定されたのは、米調査隊が2005年にキングマン岩礁で手付かずのサンゴ礁を見つけたのがきっかけだった。
調査隊はサメなどの捕食動物が、この海域ではエサとなる魚より多く生息している「逆バイオマスピラミッド」の状態にあることを発見。報告を受けた当時のジョージ・W・ブッシュ大統領(68)が09年に大統領布告を出し、一連の島や環礁の周囲50マイル(約93キロ)での商業目的での漁業と開発行為を全面禁止したのだ。
国際海洋法条約は、水産資源や鉱物資源などの経済的な主権が及ぶ水域の範囲を自国から200マイル(約370キロ)に定めている。米本土から数千マイルも離れた海域に海洋保護区を設定することへの批判もあったが、オバマ政権は今回これを島の周囲200マイルまで広げる決断をした。
この決断に対し、欧米メディアはおおむね好意的。米政府関係者は、海洋保護区の拡大が観光客を呼び込み、禁漁による資源回復で将来的には漁獲量が伸びて経済発展につながることを期待する。
ただ、当初はブッシュ前政権が設定した約22万5000平方キロの領域を9倍に拡大する構想だったが、マグロ漁業者の反対などで6倍に縮小。太平洋中南部にある海洋保護区のうち、「パパハナウモクアケア海洋保護区」などでは面積拡大が見送られた。(SANKEI EXPRESS)