ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
香港民主派、金融街占拠を宣言 警察は排除開始 深刻度最大 習政権との対立決定的
更新
中国・香港 香港で2017年に実施を見込む次期行政長官選挙の制度改革をめぐり、中心部の政府本部庁舎前で中国への抗議行動を続けていた学生ら約3万人(主催者発表)の大半が28日午後、庁舎に隣接する主要幹線道路に座り込み占拠した。香港の東西を結ぶ最重要道路で物流がまひしており、経済に大打撃を与える懸念が現実味を帯びてきた。
香港警察は催涙弾を発射して学生らの強制排除を開始。香港メディアによると、強制排除の際、負傷者が出た。人数などは不明。警察は残る学生らに、直ちに解散しなければ発砲すると警告。プラスチック弾を準備しているとの情報がある。
これに先立ち、政府本部庁舎に隣接する地区の金融街「セントラル(中環)」を占拠する大規模抗議行動の計画者が28日未明、学生ら数万人が抗議行動に集まったとして「中環占拠を正式に始動する」と宣言した。もともと10月1日に実施予定だったが、学生らに触発され前倒しで始まった。
計画者の一人、戴耀廷・香港大准教授は中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会に、長官選から事実上民主派を排除した決定の取り消しを要求し、香港政府には決定の基となった全人代への報告書を撤回し、市民の考えを反映した報告書を再提出するよう求めた。戴氏はこの2つの要求がかなえられなければ「占拠をさらにエスカレートさせる」と言明した。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪深刻度最大 習政権との対立決定的≫
香港民主派は学生らの大群衆による金融街のセントラル(中環)周辺を占拠する異例の街頭抗議に踏み切ったことで、中国の習近平政権との対立を決定的にした。習政権が要求をのまなければ抗議をエスカレートさせるとしている。これに対し、「一国二制度」とはいえ香港の主権を握る中国側は香港政府と連携し、治安回復や国際金融センターの機能維持を理由に学生らの強制排除に乗り出した。さらなる強硬な措置も辞さない姿勢で、香港をめぐる情勢は一気に緊張度を増している。
28日に香港政府本部庁舎近くで座り込んでいた李と名乗った40代の男性は「香港では共産党政権への抗議が過去に何度も起きたが、香港自らの民主化要求でここまで事態が深刻化したのは初めて。香港に欠かせない民主社会は絶対に守る」と興奮した様子で話した。
民主派の怒りは、習政権が発足してから「高度な自治」を圧迫する姿勢が強まったことに加え、間接選挙で中国の政治介入によって誕生した香港政府の梁振英行政長官(60)が、習政権の強硬路線に忠実に従い、香港への締め付けの先兵になっているように見えるからだ。梁行政長官は28日午後、緊急記者会見し、「街頭占拠は違法行為だ」と改めて非難。民主派が占拠を続ければ香港警察が強制排除すると強く警告した。
今回の大規模な抗議行動は、直接的には、2017年の長官選で「1人1票の普通選挙」の制度改革をめぐり、管轄権をもつ全人代常務委員会が8月31日、立候補認定段階で民主派の排除を決めたことが引き金となった。香港民主派はこれを「ニセの普通選挙」と呼んで拒否する構え。一方、中国側は、拒否されれば間接選挙を続けると“ゼロ回答”を突きつけている。
この対立の底辺にあるのは、中国本土での人権侵害に対する嫌悪感や、本土からの傍若無人な観光客と香港地元住民の間の摩擦などから反中感情が渦巻いていることがある。さらに英国領時代から成熟した民主社会を生きてきた香港人の誇りが民主派の急進化に拍車を掛けた。
これに対し、習政権には、香港民主化の進展を許すと、中国本土の各地でくすぶる反体制勢力や民族運動に飛び火しかねない、との警戒がある。
地元紙記者によると、27日から28日にかけて学生らを強制排除した部隊に、香港警察の制服とは異なる人員がいたことが目撃されている。中国本土側から送り込まれた人員の可能性があるという。8月には人民解放軍の装甲車が香港市内に配備されたとの目撃情報もある。
香港警察は警官隊7000人態勢で対応しているが、週明けの金融市場が抗議行動で正常に機能しない事態に陥れば、香港も中国本土も大きなダメージを受ける恐れがある。(香港 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)