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【香港民主化デモ】事態収拾の見通し立たず 中国、武力介入か譲歩か 長官辞任も
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【香港民主化デモ】×印は占拠箇所=2014年9月30日現在、中国・香港 香港の次期行政長官選挙での民主派排除を決めた中国に抗議する学生らのデモ隊は、30日も金融街セントラル(中環)の隣接地区などで座り込みを続けた。中国の国慶節(建国記念日)である10月1日と翌2日は祝日で、さらに多くの市民が参加すると予想され、事態収拾の見通しは立っていない。
親中派の梁振英行政長官は30日、記者会見し、市民生活や経済に大きな影響が出ているとデモを批判。収拾までしばらく時間がかかるとの見通しを示す一方、中国軍の出動は不要だと述べた。
今後は当初民主派が呼び掛けた通り、金融大手の拠点が集まる中環中心部に占拠が拡大するかどうかが焦点。金融機関が業務を再開する3日以降も占拠が続けば「アジアの金融センター」の機能に打撃を与え、混乱が一段と深まりそうだ。
デモ隊は中環隣接地区のアドミラリティ(金鐘)など3カ所で幹線道路の一部を占拠。周辺の交通は遮断され、学校の休校や商店の休業も続いた。香港株式市場は続落して取引が始まり、約40カ所の銀行支店や現金自動預払機(ATM)なども引き続き閉鎖された。国慶節を前に観光への影響も懸念されている。金鐘の占拠は3日目。民主派は1日に「第2段階」の行動を発表してデモ継続を呼び掛ける予定だ。
一方、香港政府は9月29日、中国の決定に基づく次期長官選の具体的な制度改革案作成に向けて予定していた市民からの意見募集を延期すると発表。デモが続く中での実施は不利だと判断した。
欧米メディアは今回のデモを、警察の催涙弾に対して学生らが雨傘をさしてガスから身を守ったことから「雨傘革命」と命名。米英両政府も支持を表明するなど国際社会の関心も高まっている。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪中国、武力介入か譲歩か 長官辞任も≫
香港中心部で続く大規模デモ。「一国二制度」で香港を統治する中国が、行政長官選挙に反中意識の強い民主派の参加を目指す学生らの要求を受け入れることは極めて難しく、デモの長期化は確実だ。香港株式市場の株価が急落するなどデモの影響が広がる中、事態打開に向けて、中国人民解放軍の武力介入があるのか、中国が譲歩する可能性はあるのか。親中派で不人気の梁振英行政長官辞任の選択肢も。収拾までのシナリオを探った。
「解放軍の出動は必要ない」。梁氏は30日の記者会見でこう断言した。しかしネット上には、香港に隣接する中国広東省深●(=土へんに川、しんせん)市に軍部隊が集結しているとの未確認情報もあり、梁氏の発言は逆にデモ鎮圧に武力介入も現実にあり得ることを市民に印象づけた。
香港の憲法に当たる「香港基本法」18条は「中国の全国人民代表大会(国会)常務委員会は、香港政府がコントロール不可能な動乱が香港で発生した場合、中央政府が中国の法律を香港で実施する」と規定。中国側は戒厳令発令や解放軍投入は可能だとしている。
抗議行動に参加する学生らは「軍が出動するなら即座に解散する」と口をそろえ、収拾に有効ではある。しかし、1989年に中国の学生らの民主化運動を武力弾圧した天安門事件を想起させ、国際社会から極めて厳しい批判が起きることは確実。高度な自治を認めた「一国二制度」も崩壊し、香港は危機的状況に陥る。
香港でのデモは、中国側が2017年の香港行政長官選で立候補資格を制限し民主派を事実上排除する決定に反発して起きた。中国指導部は、長官選で親中派以外の選出は絶対に許さない方針のため、民主派排除の決定の「撤回は不可能」(梁氏)だ。多くの学生も中国が一度決定したことを覆すのは難しいと認識し、親中派として極めて不信感の強い梁氏の辞任に照準を定めつつある。
過去には、初代行政長官、董建華氏が05年3月に任期満了まで2年余りを残して辞任。体調悪化を理由に挙げたが03年7月に国家安全条例の制定に反対する市民ら50万人によるデモをひき起こした責任や新型肺炎(SARS)への対応の遅れなどを問われ、事実上中国に解任された形だった。
梁氏が辞任すれば、現在行われている長官選の制度改革プロセスは「梁氏が提出した報告書に基づく改革」だったとして、新長官の下でプロセスをやり直すことが可能になる。中国は決定を撤回する必要がなくなり、メンツは保てる。
しかしこれまで学生らの行動を「違法行為」としていた中国政府が要求を受け入れたことになる。中国国内で暴動が頻発する中「大規模抗議行動を起こせば行政府トップの首を取れる」との印象を与えればさらなる暴動を呼びかねず、譲歩も難しいのが現状。事態収拾への鍵を握る中国の習近平指導部は困難な選択を迫られている。(共同/SANKEI EXPRESS)