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孤立打開へ 北「ナンバー2」電撃訪韓 「アジア大会閉会式」名目 南北高官協議再開で合意
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金正恩(キム・ジョンウン)氏と張成沢(チャン・ソンテク)氏の関係=2013年12月13日、※敬称略。写真は聯合ニュースなど 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)の最側近である黄炳瑞(ファン・ビョンソ)・朝鮮人民軍総政治局長ら高官による代表団が4日、仁川(インチョン)アジア大会閉会式出席のため平壌から専用機で韓国入りした。黄氏らは仁川で韓国大統領府の金寛鎮(グァンジン)国家安保室長らと会談した。韓国統一省は、一連の会談で両国が今年2月に1度行われた南北の次官レベルによる高官級協議を再開し、今月末から11月初旬の間に協議を開くことで合意したことを明らかにした。
黄氏は、北朝鮮の国家最高指導機関である国防委員会の副委員長も兼ねる事実上の政権ナンバー2。韓国訪問や国際的行事への出席は異例だ。韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権が昨年2月に発足して以降、訪韓した北朝鮮の要人では最高位となる。
実際、訪問には国家体育指導委員会委員長の崔竜海(チョ・リョンヘ)党書記や、対韓関係を統括する金養建(ヤンゴン)党統一戦線部長らが同行。その素顔は謎に包まれているが、周囲にはがっちりとした体格の警護員が終始ついて回り、他の2人をしのぐ大物ぶりを見せつけた。
北の超大物の「電撃訪韓」を韓国メディアはいずれもトップニュースで報じ、朴大統領(62)との会談や金第1書記の親書持参の可能性にまで触れ、南北関係改善への期待感を高めた。
しかし、そもそも南北会談により事態を打開したかったのは北朝鮮の側だったはずだ。中国とのパイプ役を果たしていた張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑以来、経済的な後ろ盾だった中国との関係は険悪化。国際的に孤立する中で対南接触を図り、韓国から支援を引き出して経済苦境を一気に打破したいのが本音だったためだ。
アジア大会をめぐっても北朝鮮は当初、韓国世論の懐柔を狙って大規模応援団の派遣を韓国側に提案。ただ、韓国側と折り合いがつかず実現できなかった経緯がある。
その後はアジア大会期間中も朴大統領を批判する声明を次々に出して対決姿勢をあおってきたが、3日に仁川アジア大会に派遣している選手団を通じ、4日夜の閉会式出席のため黄氏ら11人の代表団を送ると通知。大会を成功裏に終えたい韓国の足元を見透かす形で、代表団を韓国側に送り込むことに成功した。
結局、朴大統領との会談は見送られたが、韓国統一省は「あくまで時間的な理由で、韓国側は面会する用意はあった」と説明。帰国間際のアジア大会閉会式会場で、韓国側は鄭●(=火へんに共)原(チョン・ホンウォン)首相がわざわざ面談する配慮を示した。
ただ、サプライズで相手側を感激させ交渉事を自らのペースに持ち込むのは、金正日(ジョンイル)体制当時から北朝鮮が使ってきた常套(じょうとう)手段でもある。北朝鮮は最近、拘束している米国人に対する欧米メディアの取材を認め、オバマ政権への揺さぶりも強めており、11月の米中間選挙もにらみ停滞した外交と南北交渉の突破口を探っているとみられる。
国連などの国際舞台で北朝鮮国内の人権問題をやり玉に挙げ、核・ミサイル問題とともに北朝鮮包囲網づくりの口実を増やそうと攻勢をかけてきた韓国は、前日になって北朝鮮から最高幹部の派遣を打診され、受け入れ準備に追われる形で会談に臨むことになった。
朴政権の動揺を誘う意図は明らかで、黄氏は4日午前、軍服姿で仁川に到着した。「平和の祭典」であるアジア大会行事出席には似つかわしくない服装には、韓国を威嚇する思惑もありそうで、今後の展開は予断を許さない。(SANKEI EXPRESS)