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中国メディアや研究者 北の擁護再開

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中国メディアや研究者 北の擁護再開

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金正恩(キム・ジョンウン)氏と張成沢(チャン・ソンテク)氏の関係=2013年12月13日、※敬称略。写真は聯合ニュースなど  【国際情勢分析】

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)の健康問題についてさまざまな臆測が流れる中、中国メディアが“怪情報”に神経をとがらせている。北朝鮮が核開発やミサイル発射を強行し、自制を求める中国の顔に泥を塗り続けたことで、中国国内でも昨今、中朝関係は「冷淡」と表現されるが、中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は9月29日付の社説などで「中朝関係の大局には何も変化がない」と強調。欧米諸国や日本、韓国の世論の影響を受けぬよう、中国国民に訴えている。

 「中朝関係が複雑さ増す」

 金第1書記は9月3日を最後に、公の場に姿を見せていない。25日の最高人民会議(国会に相当)も欠席した。朝鮮中央テレビは25日、金第1書記が足を引きずって現地指導する様子を映した記録映画を放映。「不自由な体なのに、人民の指導の道を炎のように歩み続けるわが元帥」と説明したが、「高尿酸血症、高脂血症、肥満、糖尿、高血圧などを伴う痛風」なのか、「両足首のひび」なのか、いまだに真偽は定かではない。

 中国のインターネット上には28日、「北朝鮮で政変が発生した」とまことしやかに伝える“怪情報”が出回ったという。ただ、その政変劇の“主人公”とされたのは、2010年にすでに82歳で死去している趙明禄(チョ・ミョンロク)・朝鮮労働党政治局常務委員(当時)だったから、“デマ”であることは誰の目にも明らかだった。

 環球時報の社説は「中国国内のこうしたデマは最も下劣で、しかも際限がない。中国のネット利用者が言い出したにせよ、国外のデマをうのみにしているにせよ、中国世論のイメージを損なうことは明白だ」と嘆くと同時に、「北朝鮮やその指導者を辛辣(しんらつ)に皮肉り、あざけるような態度は、中国社会がいかに彼らを取り扱っているかという北朝鮮側の評価に影響し、中朝関係が複雑さを増す原因になる」「北朝鮮で政変が起きたという偽ニュースを捏造(ねつぞう)して、楽しいというのか?」などと自制を求めている。

 「世界の指導者に劣らず」

 浙江大学韓国研究所の客員研究員は環球時報に掲載された評論の中で、朝鮮中央テレビが放映した記録映画を根拠に、「(金第1書記の重病説に対する)北朝鮮の回答には少なくとも2つの意味がある。1つは金正恩氏はただ体の具合が悪いだけであって、重病ではない。2つめは北朝鮮の政局は安定している、ということだ」と主張している。

 そして、「金正恩氏が政権を担って以来、北朝鮮は多方面で国家イメージを改善しようとしており、以前と比べ、国内政策も対外政策も少なくない進歩がみられる」と金第1書記を評価している。金第1書記が労働者や農業従事者、知識分子や軍人、学生、スポーツ選手を訪問した回数は「世界中の国家の指導者に劣らない」と絶賛し、「こうした努力が国際世論の肯定的な評価を得ていない」と、いわゆる「西側諸国」に矛先を向けている。

 「西側諸国により妖怪化」

 研究者は、北朝鮮は弱小国家で国際世論を左右する力がない上、米国や「西側諸国」のメディアが、ほとんど北朝鮮の負の面だけを報道しているのが原因としている。「北朝鮮は西側によって妖怪化された典型的な例だ。月日のたつうちに、人々の考え方が凝り固まり、北朝鮮が何をしようとも、負の側面から理解し、評価している」のだそうだ。

 中国メディアや中国国内の研究者は、なぜ突然、北朝鮮を再び持ち上げ始めたのか-。当然ながら、中国の「国家利益」が念頭にある。研究者は「北朝鮮が一旦崩壊すれば、北東アジアおよび国際社会にとって、よいことなどないだろう」と警告。「国際社会と世論は、危急につけ込んで(北朝鮮に)打撃を与え、崩壊するように仕向けるべきではない」と訴えているが、ここまで北朝鮮情勢に気を遣うと、逆に何か崩壊の“前兆”を感じているのでは、と邪推したくなる。(中国総局 川越一(かわごえ・はじめ)/SANKEI EXPRESS

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