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中国で批判続出 アイス・バケツ・チャレンジ
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中国・四川省成都市(省都)
安倍晋三首相(59)もみんなの党の浅尾慶一郎代表(50)から指名を受けるなど、日本でも話題となっている米国発祥のチャリティー活動「アイス・バケツ・チャレンジ」が、中国にも伝播している。IT業界の有名人や芸能人、スポーツ選手などが参加。多額の寄付が集まったことで、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」に対する関心の高まりが期待される一方、チャリティー活動が盛んとはいえない中国では異論も起きている。
中国メディアによると、中国ではこれまで、スマートフォンメーカー「小米科技(シャオミ)」の創業者、雷軍氏(44)や人気歌手の張●(=青の月が円、右に見)穎(ちょう・せいえい)さん(29)、元米プロバスケットボールNBAのスター選手、姚明(よう・めい)氏(33)らが氷水を被った。8月22日現在で寄付金は約547万元(約9241万円)に達した。すでに昨年(2013年)1年間のALS支援寄付額を超えたと伝えられている。
中国メディアもALS患者に注目し、四川省の●(=龍の下に共)●(=員の右に力)恵さんのケースを紹介している。●(=龍の下に共)さんは2003年にALSと診断された。06年頃には車椅子での生活を余儀なくされるようになった。現在では全身が麻痺し、自分で身の回りのことをすることはできない。
●(=龍の下に共)さんに変化が訪れたのは12年のこと。家族がALS患者専用の視力制御看護システムを購入してくれたことが契機だった。このシステムは患者の顔の動きや眼球の運きを通じてコンピューターを操作するもの。このシステムのお陰で、●(=龍の下に共)さんは目を使って文字を打ち、意思疎通を図ることができるようになった。
今年の春節(旧正月)の時期には、●(=龍の下に共)さんはこのシステムを利用して約20万字、400字詰めの原稿用紙で500枚にも上る自伝を書きあげた。
●(=龍の下に共)さんは「私は自分の病気との闘いの経験を通じて患者を励まし、またより多くの人にALS患者について知ってもらいたい」と自伝執筆の理由を説明している。おそらくアイス・バケツ・チャレンジが流行しなければ、中国メディアがALSについて報じることも、●(=龍の下に共)さんの自伝を紹介することもなかっただろう。
もっとも、アイス・バケツ・チャレンジに参加したIT業界の有名人らには、辛辣(しんらつ)な意見も浴びせられている。「格好ばかりの無意味な行為にすぎない」「多くの参加者はそもそも慈善活動自体に関心を持っていない」-。“売名行為”との批判の陰には、富裕層に対する一般国民の反感がうかがえる。
河南省の市民からあがった反発の声は、また切実だ。中国紙、新京報によると、河南省は今年、63年ぶりともいわれる大干魃(かんばつ)に見舞われている。特に被害が大きい魯山県では、23本の河川のうち20本で水の流れが止まり、37カ所のダムのうち33カ所で水が涸れた。
数万人の飲み水にも困っている状況で、河南省全体では被災者は2000万人以上、経済的な損失は72億元(約1200億円)にものぼるという。
河南省の複数の市民は、空のバケツや容器を逆さに掲げて「水をくれ」と叫び、節水を呼びかけるパフォーマンスで、アイス・バケツ・チャレンジに対する抗議の意思を示した。ただ、この活動に対しても、中国のインターネット上では、「地域の宣伝効果を高める狙いがある」などと、批判的な声も寄せられている。
アイス・バケツ・チャレンジを取り巻くこうした事態には、中国民生省も高い関心を示しており、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」上で、「イベントの実際の効果を重視し、娯楽化、商業化の傾向を避ける」よう呼びかけたという。
もし、習近平国家主席(61)や李克強首相(59)が指名されたら-とも考えたが、実現する可能性は極めて低い。中国で純粋なチャリティー活動が根付くのは、いつの日になるのだろうか。(中国総局 川越一(かわごえ・はじめ)/SANKEI EXPRESS)