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2022年W杯開催 中国の夢想
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サッカー・ワールドカップ(W杯)が開幕し、連日、熱戦が繰り広げられているブラジルから、気になるニュースが届いた。2022年W杯カタール大会招致をめぐるスキャンダルに絡み、韓国サッカー協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長が、カタールに“レッドカード”が出された場合の代替開催に意欲を示したというのだ。米国も関心を持っているとされるが、注目されるのはやはり、最高指導者がW杯中国大会の開催を「夢」と公言する中国の動向だ。
カタール大会をめぐっては、カタールの組織委員会が一部の国際サッカー連盟(FIFA)関係者に金銭を渡していたとの疑惑が浮上。FIFA規律委員会は6月12日、この件に関して調査を行うことを表明した。カタール大会には、酷暑を避けるための冬季開催案などに対する欧州諸国の反発もあり、開催権の剥奪という最悪のシナリオもささやかれ始めている。
中国メディアによると、韓国代表のベースキャンプ地イグアスで行われたW杯関連行事に出席した鄭会長は、FIFAの方針を受け、「カタールがダメになれば、韓国が再度挑戦したい」と発言したという。「FIFAの調査結果がすべて出てから、公に発表したい」としているが、韓国はすでに17年のU-20(20歳以下)W杯の開催権を獲得。02年大会を日本と共催した経験も、アピール材料になる。
では、カタールが開催権を剥奪された場合、中国は韓国の代替開催を支持するのか-。
大陸を循環して開催するというFIFAの“原則”によれば、22年大会がアジア開催となることは暗黙の了解事項だった。しかし、中国は22年大会の招致を、代表チームの実力不足やFIFA内での政治力の低さなどを理由に断念。26年大会の開催権獲得に意欲を見せていた。
結局、カタールを含むアジア・サッカー連盟(AFC)所属の4カ国が参戦した22年大会招致への影響を考慮し、中国は26年招致の凍結を表明したが、11年に買収疑惑で失脚したモハメド・ビン・ハマムAFC前会長(65)=カタール=は当時、中国が26年大会に立候補する事を望んでいたと伝えられた。
FIFA内では「アジア」に分類されるカタールだが、本来、「中東」という区分けが一般的だ。11年のFIFA会長選に立候補(後に辞退)していたハマム氏が、現職のゼップ・ブラッター会長(78)を破り、FIFAのトップに就いていたら、2022年は中東開催と位置づけ、2026年大会をアジアに持ってきた可能性も否定できない。
また、FIFAの現体制下でも、13億人超の人口を抱える中国は有望な市場だ。中国のソーラーパネルメーカー「英利集団」は10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会の公式スポンサーになった。それまで中国国内でもほぼ無名に近かった企業が、W杯スポンサーになってしまう中国の経済力も魅力的に映るだろう。ブラッター会長が「サッカーの起源は中国だ」とする中国の主張を認めたことに対しては、「サッカーの商業化」との批判も噴出しているが…。
中国の張吉竜(ちょう・きつりゅう)FIFA理事(62)は先頃、ブラジルで香港メディアから代替開催の可能性を問われ、「現在は、まだ評論する時期ではない。すべて最終的な結論が出るまで待たなければならない」と含みを持たせた。
W杯中国大会の開催を「個人的な夢」と公言するなど、サッカーファンとして知られる中国の習近平国家主席(61)は、大事がなければ23年春まで2期10年、その座にとどまることになる。もし、中国が22年大会を代替開催すれば、習氏はその開会を宣言する栄誉を手にすることができる。(中国総局 川越一(かわごえ・はじめ)/SANKEI EXPRESS)