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中国・全人代開幕 経済成長目標7.5%維持 国防費12.2%増 強兵路線鮮明に
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【中国の第12期全国人民代表大会】政府活動報告と予算案骨子=2014年3月5日、中国・首都北京市西城区の人民大会堂 中国の第12期全国人民代表大会(全人代=国会)第2回会議が3月5日、北京の人民大会堂で開幕した。公表された2014年の予算案によると、国防予算は8082億3000万元(約13兆4460億円)。前年実績比12.2%増で、4年連続で2桁の伸びとなった。
李克強首相(58)は就任後初の政府活動報告の中で「平時の戦闘への備えと国境・領海・領空防衛の管理を強化する」と表明した。さらに「第二次大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守りぬき、歴史の流れを逆行させることは決して許さない」と強調。名指しは避けつつ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)や歴史認識をめぐって対立する日本を牽制(けんせい)した。
全人代開幕直前の(3月)1日には、雲南省の昆明駅で無差別殺傷事件が発生した。昨年(2013年)来、ウイグル族などによる暴動・抗議デモが多発していることを受け、治安維持などに充てる公共安全保障にも、2050億6500万元(約3兆4000億円)を計上。李首相は「暴力テロ犯罪活動を断固取り締まる」と宣言した。
国内総生産(GDP)成長率目標は昨年(2013年)同様、7.5%に設定し、「量」から「質」への転換を図る。李首相は、深刻化する大気汚染の改善や格差の是正などにも言及した。「いかなる腐敗分子も、法律に基づいて厳しく処罰し、決して容赦してはならない」とも主張。汚職疑惑がくすぶる前最高指導部メンバー、周永康氏(71)の処遇の行方も注目されている。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS)
≪尖閣・歴史問題で日本を批判≫
李克強首相が3月5日、全人代で首相就任後初めて行った政府活動報告は、習近平政権の対外強硬路線と保守色を強く反映したものとなった。中国の経済成長率が鈍化しているにもかかわらず、国防予算の伸び率は過去3年で最大の12.2%。習政権は強兵路線を一層鮮明にしたといえる。
李首相は報告の中で、中国が領有権を主張する尖閣諸島や、安倍晋三首相の靖国神社参拝などの歴史認識問題を念頭に、「われわれは戦後の国際秩序を守りぬく」「歴史の流れを逆行させることは決して許さない」といった日本批判を行った。
1970年代末に始まった改革開放政策以降、朱鎔基(85)、温家宝(71)各氏ら歴代首相が30回以上政府活動報告を行ってきたが、特定の国を批判したことはほとんどなかった。中国の外交関係者は「全人代に向けた報告でここまで踏み込むと、今後、日本と関係を回復したくても軌道修正が難しくなる」と指摘した。そのうえで「政府活動報告は李首相個人の考えではなく、他の指導者の意見も盛り込まれているため、この部分は対日強硬派の習主席らの意向だろう」と指摘した。
李首相はこのほか、「国家の海洋権益を断固として守る」「平時の戦闘への備えと国境・領海・領空防衛の管理を強化する」と強調した。軍拡路線を鮮明にしたもので、東シナ海上空に続き、今後、南シナ海でも防空識別圏を設定する可能性を示唆した。
一方で、温家宝前首相がよく強調していた「政治体制改革」については言及がなかった。共産党内で深刻化している腐敗問題に関しても「使命と責任を意識し、人民の期待に応えるように努力する」と述べるにとどまり、温前首相が昨年言及した「民主的な監督、世論による監督を堅持し、権力のオープンな運営を実現する」といった改革派的な表現が消えた。さらに李首相は国防分野に言及した際、「軍隊の革命化」「軍における思想・政治教育をしっかり行う」といった近年、死語になりつつあった毛沢東時代の言葉を復活させた。
北京の改革派知識人は「今年の政府活動報告は、経済分野で改革派の意見が散見されるが、政治や安全保障分野では保守派の意見がほとんどだ。全体として整合性がとれず、支離滅裂なものといわざるをえない」とコメントしている。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)
・第二次大戦後の国際秩序を守り、歴史の流れの逆行を許さず
・2014年度予算案の国防費(地方分除く)は前年度実績比12.2%増の8082億3000万元(約13兆4460億円)
・14年の国内総生産(GDP)の成長率目標は7.5%
・中央政府の公共安全費は6.1%増の2050億6500万元
・人民元の為替相場の許容変動幅を拡大
・「PM2.5」を含む大気汚染対策を強化