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客船沈没で韓国非難強める北朝鮮の焦り

 旅客船「セウォル号」沈没をめぐり、北朝鮮が韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権への非難をエスカーレートさせている。バラク・オバマ米大統領(52)も「黒いサル」とまで罵倒し、米韓世論の激しい反発に遭った。度を超した“口撃”の裏には、対北強硬姿勢で連携する米韓に対し、有効な対抗策がないことから来る焦りが透けてみえる。

 当初の「弔意」から転換

 「南朝鮮(韓国)に『自由』があるとすれば、セウォル号事故でみたように、うら若き学生さえ魚の餌になる自由だけだ」

 ラヂオプレス(RP)によると、北朝鮮国営、朝鮮中央放送は5月13日、北朝鮮国防委員会による「重大報道」の中でこう伝えた。韓国国防省報道官が12日、北朝鮮は「早くなくなるべきだ」と発言したことに対抗したものだ。

 セウォル号沈没2日後の4月18日に朝鮮中央通信が事故について初めて報じたが、韓国の報道を引用し、「眠れぬ夜を過ごす行方不明者の家族の悲しみや怒りがいかに深いか、当局は肝に銘じなければ」と間接的に非難するのにとどまっていた。

 4月23日には、朝鮮赤十字会中央委員会名義で「深い慰めの意を表する」と弔意を表明していた。

 だが、事故対応をめぐり、朴政権を追及する世論が韓国で盛り上がりだすと、北朝鮮もその尻馬に乗るように非難のトーンを上げ始めた。朝鮮労働党機関紙、労働新聞は4月29日、「(事故処理の)その過程であらわになった(韓国当局の)無能さとあきれた対応は各界の失望と怒りだけを呼び起こした」と論じた。

 朴大統領は「殺人鬼」

 朝鮮中央放送が今月(5月)1日に祖国平和統一委員会名で伝えた批判では「若い生徒ら無辜(むこ)の命が奪われても十分な謝罪もなく、責任を下に押し付ける朴槿恵に南朝鮮人民が『殺人鬼』と呪って『下野』を叫ぶのは当然だ」とまで述べた。

 その中で「南朝鮮全土が旅客船沈没で阿鼻叫喚(あびきょうかん)となるのをものともせず、米国という主人を引き入れた」とした上で、朴大統領を「オバマの女性秘書」「(米大統領という)先生の前に立つ女学生」とこき下ろしている。このことからも4月25日にオバマ氏がソウルを訪れ、核実験など北朝鮮の挑発阻止での連携を確認した米韓首脳会談への牽制(けんせい)が目的なのは確かだろう。

 オバマ氏に対しては、朝鮮中央通信が今月(5月)2日、労働者の寄稿として「アフリカの原生林に生息するサル顔そのものだ。オバマこそ、われわれに発言する資格もない人間失敗作だ」と人種差別的表現を使って攻撃した。

 米国務省のマリー・ハーフ副報道官が「最低だ。常軌を逸している」と不快感をあらわにするなど、米側が激しく反発すると、北朝鮮外務省は「彼(オバマ氏)が南朝鮮に入り込んでわれわれを中傷したことへの当然の対応だ」と言いつくろおうとした。

 世論扇動には逆効果

 韓国の国民感情を逆なでするだけの北朝鮮の一連の非難に、韓国紙、中央日報(電子版)は(5月)14日、「北朝鮮はセウォル号に口を閉ざせ」と題したコラムで「北朝鮮ができることは、犠牲になった高校生を愚弄して政権打倒を扇動することだけか」と疑問を呈した。犠牲者の親同様、2人の娘を持つとされ、「父親である金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が出てきて(非難宣伝に)『動作、やめ』と叫ばなければならない」と強調した。

 北朝鮮が4回目の核実験を繰り返し示唆しながら強行しないのは、韓国社会がセウォル号事故に揺れる中、実施に踏み切った場合の国際世論の反発が読み切れないためとの分析もある。正恩政権にとって海岸での砲撃訓練などを除き、口での非難宣伝しか米韓への示威手段がないのも実情だ。ただ、北朝鮮が狙う世論扇動には逆効果でしかないこともまた、確かなようだ。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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