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【韓国旅客船沈没】食堂周辺を捜索 米探査機も投入 死者87人に 航海士ら4人拘束
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韓国・全羅南道の珍島(チンド)沖合で旅客船「セウォル号」が沈没した事故で、捜査当局は4月21日、遺棄致死などの疑いで航海士3人と機関長1人の身柄を拘束した。容疑が固まり次第、逮捕する。
韓国海洋警察などはこの日も、連日にわたる徹夜での捜索を続けた。21日午後、新たに23遺体が収容され、事故による死者は87人、行方不明者は215人となった。生存者は発見されておらず、事故発生から6日目が過ぎ、船内での生存の望みは薄れてきている。
当局は21日、海上と船内を結ぶ複数のロープを設置し、3階の食堂への進入ルートを確保。遺体は主に食堂から見つかり収容された。事故当時、食堂には修学旅行の高校生ら多数がいたとみられ、客室周辺と合わせて集中的に捜索を進めている。また、米国の無人探査機が21日から投入されており、潮流が速く視界も悪い環境で、捜索の効率化が期待されている。大型クレーン船を使った船体引き揚げに向けた準備を始めており、行方不明者の家族から同意を得次第、引き揚げ作業に入る。
捜査当局は、すでに逮捕した船長(68)ら3人以外に、船の航行に関わった乗員10人あまりから事情を聴いている。21日には運航会社の幹部や、客室を増設するなどの改造を行った業者からも事情聴取した。日本から購入した中古船の改造状態や、車やコンテナの過積載があったかなどを調べている。(珍島 加藤達也、ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)
≪政府に向かう怒り回避 朴大統領、厳罰を指示≫
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)は4月21日の首席秘書官会議で、セウォル号の沈没について、船長らが乗客を救助せずに退避したことは「殺人と同様の行為だ」と厳しく非難した。また捜査当局に対し「(船体の)輸入から改造、安全点検、運航許可に至るまでの過程を徹底的に点検し、責任の所在を明らかにしてほしい」と指示した。
沈没原因について捜査当局はまず第1に、高速航行中の急な針路変更にあるとの見方を強めている。セウォル号は沈没直前に、右に2回、90度ずつ急旋回しているが、韓国メディアによると、「ほぼ全速の19ノット(時速約35キロ)だった」という。
そして第2に、現場は韓国でも有数の潮流の早い海域で、その難所を経験1年余りという3等航海士が操船していた。「未熟な操船技術」が急旋回に至った可能性が高い。
一方、捜査当局は船のバランスについても注目している。船会社は船を日本から購入後、収容人員を増やすために5階部分を追加する形で改造。貨物や旅客が高層階に収容されることで航行中の船体の重心が変わり、航行が不安定になった可能性があるとの見方だ。
さらに過積載だったとの情報や、操舵(そうだ)装置に異常があったとの報道もあり、こうした複合的な要因が重なって韓国史上最悪の沈没事故を引き起こした可能性が高まっている。
検察は、3等航海士に操船を任せた上、十分な救助活動を行わずに船から脱出した船長に対し、最高刑が無期懲役の特定犯罪加重処罰法(船舶事故逃走罪)を適用した。昨年7月、新たに制定されたもので今回が初適用となった。捜査当局は今後、救助された全乗組員、さらに船舶改造や船体整備に関わった業者など約20人から事情を聴く方針という。
こうした厳しい捜査方針は、国民の怒りの矛先が政府に向かうことを避けたい朴大統領の意向をくんだものとみられる。ただ、船長の逮捕罪名である船舶事故逃走罪は、船舶間の海上衝突などを前提としており、韓国の法曹関係者の間では適用を困難とする見方も少なくない。
だが、韓国では、法律よりも「国民感情」を優先する傾向がある。今回、責任者の厳罰を求める国民感情がすでに形成されており、これを意識した朴大統領の“厳罰処分”の意向に反対できる余地はなさそうだ。
≪記念撮影の高官を更迭≫
韓国の旅客船が沈没した現場近くに設けられた珍島の対策室前で4月20日、安全行政省の監査官が記念写真を撮ろうとして、行方不明者の家族から猛抗議を受けた。安全行政省は監査官を21日更迭した。
更迭されたのは局長級の宋英哲(ソン・ヨンチョル)監査官。宋氏は李柱栄海洋水産相に同行するかたちで現場に来ていた。
行方不明者の安否を気遣う家族らは、宋氏の無神経な行為に激怒。「苦しんでいる私たちを前にして。これが記念することなのか」などと李氏らに詰め寄った。李氏が代わりに謝罪したことで、混乱は収まったが、捜索の遅れや情報の遅れる中、韓国政府に対する家族の不信はさらに強まっている。(珍島 加藤達也/SANKEI EXPRESS)