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韓国旅客船沈没2週間 死者205人に 救助不手際 朴大統領、初めて謝罪
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韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)は4月29日の閣議で、旅客船「セウォル号」の沈没事故をめぐり事前の防止策や発生直後の救助などに不手際があったとして、「多くの貴い命が犠牲になり、国民の皆さまに申し訳なく、心が重い」と述べた。今回の事故で朴氏が謝罪するのは初めて。韓国政府の対策本部によると、死者は205人、行方不明者は97人となった。
朴氏は「過去から積み重なった弊害を正すことができず、事故が起きて残念だ」と述べた上で、国民の生命に関わる重大事故に対処する政府指揮系統に問題があったとの認識に立ち、「国家安全処」(仮称)を新設すると明らかにした。
韓国メディアは、部下を叱責するだけで謝罪しないとして朴氏を批判。歴代大統領が事故などで謝罪した事例と比較して「謝らない大統領」を際立たせて伝え、非難を強めていた。
謝罪はこうしたメディアの姿勢を和らげる狙いとみられるが、国民の間には「閣議での所信表明にすぎず、国民に対する謝罪ではない」との意見もあり、収拾に一定のめどが立った時点で記者会見や声明発表などの形で改めて謝罪せざるを得ないものとみられる。
≪希薄な安全意識 社会へ警鐘≫
珍島(チンド、韓国南西部)沖で沈没した旅客船「セウォル号」の事故から4月30日で2週間。事故をめぐっては、船長ら乗務員の無責任な行動が非難されているが、海洋警察の初動対応の遅れや政府に対する不信も強まる。一方で、韓国社会が抱える希薄な安全意識への反省も広がっている。
事故原因をめぐっては、日本から購入後、船体を韓国で増築した上、過積載やバラスト水の放出でバランスを失った疑いが浮上。さらに高速航行中の急旋回や、現場海域を初めて担当した3等航海士の経験不足など「複合的な要因」との見方が強まっている。
船体の異常発生から転覆、沈没するまで2時間以上あったにもかかわらず、人的被害がこれほどまで拡大したのも今回の特徴だ。
事故後、乗客を救助せずに真っ先に逃げた船長の責任が追及されている一方、異常発生直後に救難要請を受けながら、通報した高校生を乗務員と誤認して船の所在地を尋ねるなどもたつき、到着後も船内に入って救護しなかった海洋警察の初動態勢も問われている。
事故の悲惨さは、国家として船舶の安全航行を監督・指導し、事故後の迅速な対処を求められた朴槿恵政権の責任論に直結した。
事故発生直後、韓国政府は乗客368人を救助したと発表。しかし集計ミスで、実際に救助されたのは174人にとどまり、救助者数はその後二転三転した。
朴氏は事故発生翌日の(4月)17日、乗客家族の待機所を訪れ、家族を慰めた。だが、船舶の航行安全に対する対応のずさんさが次第に明らかになるにつれ、海洋警察や海運行政を所管する海洋水産省や重大事故の対策を担う安全行政省など、行政の責任を問う声が増大した。
(4月)27日には内閣の責任者として鄭●(火ヘンに共)原(チョン・ホンウォン)首相(69)が初動の遅れの責任を取って辞意表明。さらにメディアの批判は「責任を認めず謝罪もしない」と朴氏に向かった。
(4月)28日に発表された世論調査では朴氏の支持率は57.9%と前週より6.8ポイント下落。(4月)28日、大統領府のホームページは大統領を非難する書き込みへの賛否をめぐってサーバーがダウンした。朴氏は29日、閣議で謝罪したが、「国民や遺族に対する謝罪はない」とする批判もくすぶっており、さらなる対応を迫られることになるとみられる。
事故をめぐっては、韓国ではさまざまな反省が叫ばれているが、根本的な問題として韓国社会が抱える「安全」に対する認識の希薄さを問う声も目立つ。韓国メディアは「日常的に信号無視が横行する韓国社会」などと社会全体での安全意識欠落に警鐘を鳴らす。
そうしたなか、日本が国民の安全に高い意識を持ち、コストと時間をかけている点が注目されている。また乗客の家族が「日本の協力申し出を断ったのか」と政府に確認するほど、日本の海事救難技術や装備にも高い関心が集まった。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS)