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【韓国旅客船沈没】「小潮」生かし捜索 疲労増す潜水士
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≪死者171人、不明者131人に≫
韓国南西部・珍島沖の旅客船セウォル号沈没事故で、海洋警察などの救助チームは4月24日、潮流が比較的穏やかな「小潮」がこの日までは続くとみられることを受けて、船内に残る行方不明者の捜索に全力を挙げた。潜水士らは「行方不明の高校生らを一刻も早く見つけなければ」との一心でぎりぎりの捜索を続けているが、疲労は増し不調を訴える潜水士も出ている。
韓国当局によると、24日夕までに新たに12遺体が収容され、死者は計171人、不明者は計131人となった。
23日までの捜索で、救助チームは修学旅行の高校生らがいた大部屋などを集中的に捜したが、船内に空気の残る場所「エアポケット」はこれまで確認されていない。
生存者発見の期待が薄れつつある中、聯合(れんごう)ニュースによると、対策本部関係者は「最後まで(不明者を)捜索した後、船体を引き揚げる」として、徹底的な捜索実施を強調している。
一方、検察などの合同捜査本部は24日、乗客を置いて逃げたとして遺棄致死容疑などで機関士ら4人を逮捕した。同じ容疑などでイ・ジュンソク船長(68)ら7人を既に逮捕しており、逮捕者は計11人になった。捜査本部はほかに入院中の4人を取り調べており、船から逃げた操船担当の乗組員15人全員を立件する見通しだ。
4月24日付の韓国紙、東亜日報は、事故当時、操船していた操舵(そうだ)手が左にかじを取るよう命じた航海士の指示を聞き間違えて、右にかじを切った可能性があると報じた。報道によると、航海士は当時、左舷方向にかじを取ることを意味する「ポート」の指示を出したが、操舵手は合同捜査本部の調べに「反対の意味に捉えた」と供述したという。
政府の対策本部によると、24日の現場海域の天候は良好で、救助チームは3、4階の大部屋を中心に捜索。底引き網漁船などを周囲に配置し、遺体が海中に流されないよう注意して作業を進めている。船内の捜索は、海洋警察や海軍、民間のベテラン潜水士らが交代で実施。海洋警察が統率し安全確保に努めているが、捜索は時間との闘いでもあり、無理な潜水と背中合わせだ。
(4月)22日には、海軍の潜水士が捜索後、頭痛や腕のまひを訴え、治療を受けた。聯合ニュースによると、23日にも潜水士10人がまひや疲労蓄積などの症状を見せたという。
長時間の潜水後の急浮上に伴い、血行が妨げられる「減圧症」とみられている。構造が複雑な船内の捜索中、酸素供給用のホースがねじれ、急浮上したケースもあったという。
民間潜水士でつくる「韓国海洋救助協会」の黄大植本部長(57)は「事故現場は水温が11度前後と低く、水中の視界も極めて悪いため、潜水に適さない環境」と指摘する。救助チームは、減圧症を治療する減圧室を搭載した海軍艦艇を現場周辺に配置した上で、懸命の捜索を続けている。
≪胴衣のひも結んだ男女生徒、船内で見つかる≫
珍島沖で沈没した韓国の旅客船内で、互いの救命胴衣のひもを結んだ男女2人の高校生の遺体が見つかった。ひもを解き男子生徒を先に収容しようとしても、離れがたいかのように浮かび上がらず、潜水士らは涙したという。韓国紙、京郷新聞が4月24日伝えた。
35年の経験を持つ潜水士(58)は(4月)22日、速い潮流と約30分間格闘した末、船内に入った。乗客用通路でジーンズに救命胴衣を着た男子生徒の遺体を発見。遺体を船外へ出そうと押した時、重みを感じた。1メートルほどの胴衣のひもが下に伸びている。たぐった先には結び目があり、はだしの女子生徒が身に着けた胴衣につながっていた。
「どれほど恐ろしかっただろう。一緒に恐怖に耐えて生き残ろうと、互いのひもを結んだのだろう」と潜水士。
潜水時間が10分しか残っておらず、2人の遺体を一度に引き出せないと思い、男子生徒から先に引き揚げようとひもを解いたが、遺体が浮かび上がらない。
「この子たちは離れるのが嫌なのか」との思いに涙が出て力が入らなくなり、2人を残し水面へ上がった。「これまでで一番胸が締め付けられた」と潜水士は語った。
2人を引き揚げるために助けを求めた後輩たちも、作業をしながら涙を流したという。潜水士は取材に対して「どうか安らかに」と2人の生徒の冥福を祈った。(共同/SANKEI EXPRESS)