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【香港民主化デモ】香港、対話解決模索 強制排除遠のく デモ隊内にスパイ疑惑 募る不信感

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【香港民主化デモ】香港、対話解決模索 強制排除遠のく デモ隊内にスパイ疑惑 募る不信感

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中国・香港中心部の政府本部庁舎  香港で続く大規模な街頭デモは6日、梁振英行政長官(60)が求めていた「退去期限」を迎えたが、デモ隊側が政府本部庁舎の包囲を一部解除し、強制排除の可能性は遠のいた。デモ隊、政府側双方が対話路線に落ち着きつつあり、今後は撤退に向け落としどころを探る動きが活発化しそうだ。

 民主派系学生団体の大学生連合会(学連)の代表は5日夜、政府ナンバー2の林鄭月娥政務官(57)=閣僚=との対話に向け、政府側と事前協議を行ったと発表し、「強制排除を行わないことが正式対話への条件だ」と述べた。政府側も強制排除の動きを取らなかった。

 デモ隊は6日午前、政府本部庁舎の出入り口を一部開放。約3000人の職員が混乱なく登庁し、政府機能のまひ状態は解消された。香港島中心部の中学校の一部も授業を再開した。

 行政長官弁公室(官邸)前は引き続き占拠されているが、政府は7日の行政会議(閣議に相当)を礼賓府(旧香港総督府)で開くことを決め、占拠解除に固執しない姿勢を示した。デモ隊も、占拠が長引けば市民の支持が弱まることを理解しており、双方が対話路線に利益を見いだしている。

 ただ、対話の日程は正式に決まっていない。林鄭氏は3日、全国人民代表大会の「決定は撤回できない」と述べ、学生らが求める行政長官選挙制度改革案の再改定を否定した。アドミラリティ(金鐘)や九竜地区モンコック(旺角)などの占拠も続いており、対話が実現しても撤退につながる成果が出せるかは不透明だ。(香港 河崎真澄、田中靖人/SANKEI EXPRESS

 ≪デモ隊内にスパイ疑惑 募る不信感≫

 大規模デモで混乱が続く香港中心部の政府本部庁舎前では6日朝、職員が部分的に撤去された鉄柵の隙間を通って続々と出勤した。一方、5日夜に一部の封鎖を解くことで警察当局と合意したと発表した学生が「警察のスパイ」ではないかとの疑惑が浮上。長期化でデモ隊に疲労の色が濃くなるなか、学生らは警察への不信を募らせている。

 庁舎前には出勤を見届けるため香港や海外のメディア関係者約50人が集結。デモに参加する学生も駆け付けたが、大きな混乱はなかった。

 職員は庁舎入り口に残る鉄柵を険しい表情で見詰める。ある女性職員は「学生のやり方は私たちの生活に悪影響を与えており、誤りだ」と大声で訴えた。

 本部庁舎に隣接する梁振英行政長官の弁公室(官邸)前では、前夜から道路占拠を続ける学生らの姿があった。

 「逮捕されたり、けがをしたりする危険性がある。ここに残るかどうかは自分で判断して」。デモ隊リーダーの説明に聞き入っていた香港科学技術大3年の女子学生(20)は「不安だけど、私は残る」と語った。

 5日夜、デモ隊は当局に譲歩し、本部庁舎前の鉄柵を部分的に撤去。手伝っていた女子学生は「これは妥協ではない。デモへの幅広い支持を得るためだ」と強調した。

 6日昼、デモ参加者は200人ほどに落ち込んだが、会計士の男性(26)は「仕事している人もいるので日中は参加者が減るけれど、夜になって戻ってくる人も多い」と話した。

 補助警察隊員と判明

 一方、10月6日付の香港各紙によると、5日夜に行政長官弁公室前の封鎖を解くことで警察当局と合意したと発表した学生に「警察のスパイ」との疑惑が浮上している。

 この男子学生は樹仁大学の3年生(21)で、5日午後6時ごろ、官邸前を封鎖していたデモ参加者十数人の「代表」と称して警察と交渉。その後、警察幹部と握手して解除を宣言し、鉄柵を撤去した。

 この模様を地元メディアが速報し、AP通信も記事を配信した。だが、別の場所からデモ参加者らが駆けつけ再び一帯を封鎖。大学生連合会(学連)幹部も現場で「封鎖解除には合意していない」と否定した。

 その後、この学生の制服姿の写真がネット上に出回り、警察の支援部隊「補助警察隊」の隊員と判明。学生は「催涙弾を使用した警察に驚いて辞表を出した。強制排除を避けたかった」と釈明した。

 補助警察隊は、災害や大規模事故などの際に正規の警察を助ける組織で、社会人や大学生が加入できる。学生の説明は一応、つじつまは合っている。だが、「食料を搬入する」と言って封鎖中の官邸に入ったトラックに催涙ガスのようなドラム缶が積まれていたり、逮捕したデモ参加者の学生を約40時間拘束する一方で、学生を襲撃した暴力団関係者を逮捕の翌日に保釈したりといった事態が相次いでおり、デモ参加者は警察への不信感を強めている。(SANKEI EXPRESS

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