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【産経前ソウル支局長在宅起訴】関係改善に冷や水 遠のく首脳会談
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外務省を出る、韓国の金元辰(キム・ウォンジン)駐日公使を乗せた車=2014年10月9日午後、東京都千代田区(共同) ソウル中央地検が産経新聞社の加藤達也前ソウル支局長を在宅起訴した問題は、改善に向けて動き始めたかにみえた日韓関係に冷や水を浴びせた。安倍晋三首相は、朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談に繰り返し意欲をみせてきたが、韓国側の対日姿勢はかたくななまま。首相が目指す11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での日韓首脳会談実現への道のりは遠いといえそうだ。
政府は今回、「内政干渉」と韓国側に反撃されることを念頭に、神経質なほど「抗議」という言葉自体を避けている。それでも、城内実外務副大臣は9日の記者会見で「事実上の抗議に近い形だ」と述べ、政府として今回の事態を看過できない立場を強調した。
日韓は8、9月に2カ月連続で岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の会談を行い、今月1日には都内で外務次官級の「戦略対話」を1年9カ月ぶりに開催、ハイレベルの対話の機会を増やしてきた。9月には森喜朗元首相が訪韓し、朴大統領に首相の親書を渡した。
政府は、外相会談や次官級対話などの場で、加藤前支局長のコラムをめぐる問題を必ず取り上げ、慎重な対応を求めてきた。だが、韓国側は日本政府の再三の訴えや、国際社会の強い懸念を無視するように在宅起訴に出た。
外務省の伊原純一アジア大洋州局長から呼び出された金元辰(キム・ウォンジン)駐日韓国公使は、在宅起訴が日韓関係全体に与える影響について「無関係だ」と強調した。
これに対し、外務省幹部は「日韓関係が改善に向けて動いていただけに、今回の在宅起訴は大きなダメージだ」と指摘した。さらに「韓国は先進的な民主主義国家のはずだ。言論の自由、報道の自由は保障されてしかるべきではないか」と強い不快感を示した。
政府は、APECでの日韓首脳会談実現に向け対話路線は維持する構えだが、政府高官はこう語り、天を仰いだ。
「加藤前支局長の一件で首脳会談を呼びかけないことにはならないが、いろいろなことが前に進みにくくなる」(山本雄史/SANKEI EXPRESS)
≪国際イメージ悪化 韓国内にも懸念の声≫
加藤前ソウル支局長の在宅起訴処分には、日本政府だけでなく米国務省報道官が「懸念」を表明するなど、国際社会で問題視されつつある。日本をはじめ海外からの韓国批判がさらに強まるのは必至だったにもかかわらず、なぜ処分に踏み切ったのか。その判断を問う声が内外で強まるのは確実だ。
韓国では9月19日~10月4日まで仁川(インチョン)アジア大会が開催されたが、「大会期間中の処分決定の可能性はなかった」(韓国政府筋)という。海外からの来賓、外交関係者やメディアが多数集まる中、韓国の印象が悪化するのを避けたかったためだ。
しかし、アジア大会終了を待っていたかのように発表された起訴処分は、朴槿恵大統領がアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席のため14日からイタリアを訪問する直前というタイミングとなった。朴大統領が帰国する18日まで待つと、処分がさらに先送りになることなどに配慮したとみられるが、逆に諸外国からの批判に直接さらされる可能性も高まった。
韓国の国際イメージの悪化を心配する声は政権や政界、メディアの一部にもある。朴大統領自身、問題に間接的に触れ「外交関係への影響」も口にしていた。
産経新聞社に批判的な朝鮮日報(3日付)でさえ、「国際世論は韓国に有利とはいえない」「韓国は言論弾圧国家とのイメージが生じかねない」と指摘した。
今回の処分については、欧米のメディアが次々と報じており、韓国での一連の懸念は現実のものとなりつつある。ただ、海外での反応に比べ、韓国では在宅起訴処分に関する報道は地味で、そこには「言論の自由」が脅かされかねないことに対する当事者意識はあまり感じられない。朴槿恵政権の韓国は、言論の自由と人権の問題で国際常識を問われている。外交問題化は必至だったにもかかわらず、異例の海外メディアへの捜査、起訴処分という判断を下し、自らを追い込んだといえる。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)
≪各紙 裁判見通しなど報道≫
加藤前ソウル支局長の在宅起訴処分について、韓国各紙は9日付で取り上げ、起訴理由や裁判の見通しなどを報じた。
この中で保守系大手紙、中央日報や朝鮮日報は検察側の起訴理由について詳報。報道を総合すると、検察側は(1)女性大統領にとって不適切な男女関係があるように虚偽事実を示し、大統領の名誉を毀損(きそん)した(2)当事者らに事実確認を行うなど必要な措置をきちんと取っていない(3)証券街情報紙など信頼の置けない資料以外に取材根拠を示すことができない(4)謝罪や反省の意向を示していない-点を起訴理由に挙げたという。
これに対し、左派系の京郷新聞は、「検察側は加藤前支局長のコラムに関し、『虚偽』『悪意的』だと強調するが、立証するのは容易ではないとみられる」と指摘。「(加藤前支局長のコラムは)公益的目的のための疑惑提起だったことから、加藤前支局長が明白に虚偽であると認識していたと立証するのは困難」という西江大法学専門大学院教授のコメントを添えた。
京郷新聞はまた、加藤前支局長の裁判では、韓国最高裁が2011年にMBC放送の虚偽報道に対し、刑事上の名誉毀損に関しては無罪判決を出した際の判例が基準になると主張した。これはMBCが米国産牛肉について、BSE(牛海綿状脳症)の危険性を番組で指摘したもので、政府当局者の名誉が毀損されたと起訴されていた。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)