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韓国統一地方選 逆風しのいで与党「痛み分け」

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韓国統一地方選 逆風しのいで与党「痛み分け」

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【韓国統一地方選】主要17(8市9道)首長選の開票結果=2014年6月4日、投開票、※選管発表による  6月4日投開票の韓国統一地方選は5日までの開票の結果、焦点となっていた主要17(8市9道)首長選で、左派系第1野党の新政治民主連合の候補が9カ所で当選を決め、保守系与党のセヌリ党をわずかに上回った。ただ、与党としては旅客船沈没事故で逆風が吹く中での選挙だっただけに、事実上の「痛み分け」に終わったとの見方が出ている。

 主要17首長選では、改選前より与党系が1減、野党系が1増。このほかの市長や郡長など226の首長選では、セヌリ党が117カ所、民主連合が80カ所、無所属が29カ所で勝利した。民主連合はソウル市長選で現職、朴元淳(パク・ウォンスン)氏(58)がセヌリ党の重鎮、鄭夢準(チョン・モンジュン)氏(62)を破り当選を果たしたものの、仁川(インチョン)ではセヌリ党候補に市長の座を奪われた。セヌリ党は京畿道(キョンギド)、釜山(プサン)で勝利。民主連合は大田(テジョン)、世宗(セジョン)、忠清北道(チュンチョンプクド)、江原道(カンウォンド)を押さえた。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS

 ≪逆風しのいで与党「痛み分け」≫

 「国民の意思を謙虚に受け止め、新たな国づくりのための国家改造に最善を尽くす」

 統一地方選から一夜明けた6月5日、大統領府(青瓦台)報道官は選挙結果についてこうコメントした。

 選挙結果そのものは、朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)を支える与党セヌリ党にとって、手放しで喜べるものではない。

 重要地域のソウル、釜山などの主要8市と9道の計17首長選では、与野党比率は選挙前の9対8から8対9と逆転。ただ、与党の選挙対策関係者は「悪い負け方ではない」という。

 「当面の危機を回避」

 世論調査で、「敗北」と出ていたソウル近郊の仁川市と京畿道でいずれも勝ったからだ。

 仁川は4月、300人以上の死者・行方不明者を出した旅客船「セウォル号」の出港地である。また京畿道には、修学旅行中にセウォル号に乗り合わせて事故に遭った檀園高校がある。仁川も京畿道も、相次いで露見した当局の失態により、政権批判の発信地となっていた。加えて、遺族らを反権力闘争に扇動しようとする労組など左派系の強い地域-。

 与党側は大敗を喫しかねなかった。

 任期を3年半以上残しての「レームダック(死に体)化」という最悪のシナリオもちらついていた朴政権と与党セヌリ党の幹部には、2つの地域で勝利したことで「当面、危機を回避した」(大手調査機関)との認識が広がっている。

 今回の選挙で与党が最後にすがったのは、事故直前の4月中旬には7割の支持率を誇っていた朴氏個人への根強い人気だった。

 今回の選挙は元々、朴政権の中間評価の意味合いがあった。しかし沈没事故で韓国社会のずさんな安全認識と、無責任な体質、緊急時に機能しない危機管理機関、社会のいたるところにある公務員の癒着、汚職体質-といった醜悪な部分が次から次へと露見した。

 悪材料が重なって朴氏の支持率は下がり、5割さえも下回ったが、それは、途中から「これだけの逆風の中でも、まだ5割近くの支持があるのか」という驚嘆に変わった。

 「独断の女王」変われるか

 与党側は選挙戦最終盤で、幹部自ら「朴大統領を助けてください」と演説。有権者に「朴槿恵に任せて改革を続けるのか、改革の中断か」という構図に切り替え、有権者に選択を迫った。左派系紙の幹部は「改革の中断や政治の不安定化を嫌う保守のバネが働いた」と分析している。

 朴政権最大の不安要素として指摘されてきたのが、「不通」と批判されてきた朴氏の「意思疎通能力」の低さだ。

 朴氏は沈没事故で更迭した鄭●(=火へんに共)原(チョン・ホンウォン)首相(69)の後任を決め、改革イメージを押し出す意向だ。しかし鄭氏の後任としていったん指名した検察OBで元最高裁判事の安大煕(アン・テヒ)氏(59)が、退官後、わずか5カ月で16億ウォン(約1億6000万円)の弁護士報酬を得ていたことが判明。結局、指名を辞退した。

 これは朴氏が人事や政策の構想を他人に相談せず、「自分の印象を書き留めたノートに基づいて行うという悪弊を脱していないことを証明している」(大統領選当時の側近)。結局、朴氏の政権運営の成否は、自身の政治スタイルを変えられるかにかかっている。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS

 ■韓国統一地方選 金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の1995年に35年ぶりに実施されて以降、今回が6回目。全国9道の知事選と、首都ソウル市や2012年発足の世宗市など主要8都市の市長選を合わせた計17カ所での勝敗が焦点。有権者は19歳以上で、永住権取得から3年以上の外国人も投票できる。10年の前回選挙では、李明博(イ・ミョンバク)政権の与党ハンナラ党(現セヌリ党)は主な16カ所の首長選のうち勝利は6カ所にとどまり敗北した。

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