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【まぜこぜエクスプレス】Vol.29 企業がやさしくなれば社会が変わる
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インタビューに答えるコニカミノルタビジネスソリューションズの和田幹二社長(山下元気さん撮影) □コニカミノルタビジネスソリューションズ 和田幹二社長に聞く
一般社団法人Get in touchが目指すのは「まぜこぜの社会」。誰も排除されず、すべての人が自分らしく暮らせる環境をつくっていくために、企業が果たすべき役割とはいったいなんだろうか。Get in touchのパートナー企業でもあるコニカミノルタビジネスソリューションズ社長の和田幹二さんに話を聞いた。
――ヨーロッパに長く滞在されていたんですよね。日本と違うなと思われるのはどんなところですか?
「たとえば電車に乗るとき、日本人は並びますよね。何で並んでいるんだと思いますか?」
――並ぶのがマナーだからでしょうか。前に並んだ人から順番に乗るというルールがあるから
「ところが、欧米ではほとんど並びません。なぜならレディーファーストという言葉に象徴されるように、女性や高齢者や子供を先に乗せるといった、その国なりの秩序があるんです」
――なるほど。日本人はルールやマナーを守るし、きちんとしているという印象がありますが
「確かにそれは日本の良いところですが、欧米の方が人に優しく、社会の民度が高いなと思うんです」利潤追求は行き詰まる
――そうした感覚の差は仕事の仕方や企業のあり方にも影響していますか?
「うまく説明できませんが企業となると、また違う感覚なんです。日本企業はある意味で『社会貢献』に対する感覚が高い。利潤追求ではなく伝統を伝えたり、世の中のために仕事をしたりするという意識があるから、欧米に比べて100年以上、200年以上と長く続いている会社が多いのだと思います。一方で欧米企業、特にアメリカはまだまだ利潤追求が強いと思います」
――一方でアメリカには「成果を出した人が社会に還元するのが当然」という良い文化もあります。スポーツ選手もハリウッドの芸能人も、活発に社会活動を行っていますよね
「確かに、欧米は成果主義でも、利益を社会に還元する風土、文化がありますね。いい意味でも悪い意味でも、日本は盆栽の世界だと思うんです。自分のテリトリーはきちっと守る半面、そこから外は無関心」
――でも、日本企業もCSRの部署ができるなど、進化していますよね。「理念を追求すれば、結果的に成果がついてくる」ということでしょうか?
「利潤追求が本来の企業の目的ではない。だから売り上げや利益だけを追求している会社は結果として行き詰まるんです。企業が永続的に存在していくためには、全てのステークホルダーとの関係の中で生きていく必要があります」
――ただ残念ながら景気が悪くなると企業に余裕がなくなり、社会貢献活動の費用がどんどん削られていくという実態もあります
「そこは永遠のテーマですね。どれだけ『社会とのつながりで生きる』ということを意識していられるか。個人でも同じです。収入があるとき、ないとき、自分が社会の中でどう生きるのか。いろんな考え方があると思うんです」
――そんな話を社内でもされているのですか?
「毎月私の思いを社員に発信しています。(社内報の)最新号はコニカミノルタが大事にしている6つの企業バリューの一つである『Open and honest』をいかに守り、進化させるかをテーマにしました。年をとると思い込みが強く頑固になりがち(笑)。オープンであり続けるために、私自身が努力していることについて書きました」
――それは、とても知りたいです(笑)
「私も好き嫌いがあり、パッションだけで考えると、否定的になりがちです。なので、『この人が言っているから』といった情報に振り回されず、内容そのものを論点にするよう心がけています。それから、感覚的に処理せず、できるだけ論理的に考えるようにしています」
――そこは「まぜこぜの社会」にとって大事なポイントです。だって、「~人が嫌い」「障がい者は~」といった、ほとんどの差別は感覚的で、論理的ではない。気持ちだけでは、「まぜこぜ」は実現できないのだと思います
「伝え合うことも大事ですね。この間、温泉に外国の方が入ってきてにぎやかにしゃべり始めた。ここは言わなければと思って、『温泉は日本人にとって虫の声や自然の音を聞き、情緒を楽しむ場所でもある。静かに雰囲気を楽しむことも大事なこと』と伝えたら、わかってもらえました。日本人の弱いところですが、これからは、異文化をハンドリングする能力ももっと身に付けていく必要があると思います」
――文化の違いを面白がれるといいですね。企業で「まぜこぜ」が実現できると、社会も変わっていくんじゃないでしょうか
「われわれも少しずつ変わろうとしています。たとえば障がい者雇用。仙台では、複合機の清掃活動を障がい者の方々に担当してもらう活動を始めており、6人を雇用しました。そのほかにも、視覚障がい者を支援する立体コピー、コーヒーや紅茶などのフェアトレード商品の導入、贈答用の花に障がい者施設で栽培された胡蝶蘭を利用するなど…。現場のメンバーの中に強い思いをもった人がいるので、決してトップダウンではなく、着実に輪が広がっています」
――社内の雰囲気がとてもオープンなので、いいなぁと思いました
「本社移転を機に、働き方を変えていく取り組みを始めています。『働け、働け』という会社からみると、『甘い』『ゆるい』と言われるかもしれませんが、そこがわれわれのよさ。たとえば社内では『社長』と呼ぶと罰金です(笑)。ポジションパワーで、自由な議論ができない雰囲気は最悪です。若い人もキャリアの長い人も役職関係なく同じレベルで議論できる空気が大事だと思っています」
――だけど、自由というのは難しい。与えられた自由ではなく本来の自由を作り上げるためには個々人の創意工夫や主張、議論を戦わせる勇気もいる。そこも、日本人はまだまだ弱いところなのではないかと思います
「そういう文化も理解し、日本人のいいところも維持しながら、人にやさしい会社、やさしい社会にちょっとずつでも変わっていけばいいのかなって思っています」(女優、一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS)