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経済
「risk taker」 世界新の冒険 グーグル副社長 上空41キロからダイブ
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IT大手グーグルのアラン・ユースタス上級副社長(57)が24日、米西部ニューメキシコ州ロズウェル上空約41キロの成層圏からスカイダイビングに成功、高度世界記録を更新した。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、グーグルで技術部門を統括するユースタス氏は、社内では、自らのこだわりのためならいかなるリスクもいとわない「risktaker(リスク・テイカー)」の異名を持つ。今回の計画も3年間かけ、極秘裏に準備。グーグルからの資金提供の申し出も断り、少数のチームメンバーと手弁当で世紀のダイブを成し遂げた。
「本当に素晴らしい! そして美しい! 僕は宇宙の暗闇と大気圏をこの目で見ることができた。今まで見たこともないような美しさだったよ」
ユースタス氏はダイビングを終え、心境をこう語った。宇宙服に身を包んだユースタス氏は気球を使い約2時間かけて成層圏に到達。気球を体から切り離すと音速を上回る最高時速1322キロで落下し、パラシュートを使って約15分で地上に戻ってきた。
これまでの高度世界記録は2012年10月にオーストラリアの元パラシュート部隊兵士、フェリックス・バウムガートナーさん(45)が記録した約39キロだった。
ただ、バウムガートナーさんがスポンサーから多額の資金を集めて、精巧に造られたカプセルによって上空に運ばれていったのとは対照的に、ユースタス氏は必要最小限の装備だけを準備。撮影用のカメラと交信用のラジオも市販品を利用した。
当然、グーグル側は資金提供を申し出たが、「それでは商業的なイベントとなり、(もし失敗したら)会社に迷惑がかかる」とユースタス氏が拒否。11年に個人的に知り合ったパラゴン・スペース・デベロップメント社の協力を得て計画を進めた。バウムガートナーさんの降下は大々的にインターネット中継されたが、今回は成功が確認されるまで発表を控える段取りが取られた。
ユースタス氏は、フロリダ技術大学(現中央フロリダ大学)卒のコンピューター科学者。入学当初はフロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドでポップコーンやアイスクリームを販売するアルバイトに明け暮れる毎日だったが、「コンピューター科学」に出合ってその面白さに引かれるようになり、この分野で1つの博士号を含む3つの学位を取得。卒業後、IT企業がひしめくシリコンバレーで、米国を代表するコンピューター企業のディジタル・イクイップメント・コーポレーションに就職した。
米ヒューレット・パッカード西部調査研究所長などを経て02年、グーグルに入社。検索エンジン「グーグル・サーチ」の担当のほか、余って廃棄される運命の食べ物を食事に困っている施設に提供するセカンドハーベスト事業などにも携わり、守備範囲は広い。
宇宙への関心はフロリダ州オーランドに住んでいた幼少期に家族と一緒に宇宙ロケットセンター「ケープ・カナベラル」の打ち上げを頻繁に見に行っていて芽生えたという。シリコンバレーではセスナ機の操縦やパラシュート降下の“ベテラン”として知られ、「いつもスリルを探し求めている」と評されている。
降下を終え、「たいへんワイルドな冒険だった」と語ったというユースタス氏の次なる冒険が注目される。(SANKEI EXPRESS)