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日中外相 「政府対話を早期再開」 「歴史」「領土」「危機管理」…首脳会談でも対立の火種消えず

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日中外相 「政府対話を早期再開」 「歴史」「領土」「危機管理」…首脳会談でも対立の火種消えず

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会談に臨む、中国の王毅外相(右手前)と岸田文雄外相(左手前から2人目)=2014年11月8日、中国・首都北京市(共同)  岸田文雄外相は8日、北京で中国の王毅外相と約50分間にわたり会談した。岸田外相は会談後、記者団に対し、日中がさまざまな分野で対話を再開し、協力を強化していくとの「方向性」で一致したことを明らかにした。安倍晋三首相と習近平国家主席による日中首脳会談について、岸田氏は開催の重要性を強調したが、日時は決まっていないとした。日中外相の公式会談は2012年9月以来2年2カ月ぶり。

 岸田氏は会談について、「両国関係の改善に向けた流れを確かなものとし、関係改善に向けた取り組みについて率直な意見交換ができた」と述べた。

 会談の中で岸田氏は、外相間の協力関係強化に向けた取り組みの促進や日中ハイレベル経済対話、外務次官級戦略対話、日中安保対話といった政府間協議の早期再開を提案した。また、海洋での信頼醸成に関し、中国船によるサンゴ密漁への「強い遺憾の意」を直接伝えた。

 岸田氏の提案について王氏は、「積極的なものと理解する」と回答。また、前日発表した4項目の合意文書を「日中関係の改善に向けた一歩を踏み出すもの」と評価した上で、「日本側の歴史認識」について注視していると述べたという。

 中国国営新華社通信によれば、王氏は「日本側は正しい歴史認識を持ち、過去の侵略行為と決別すべきだ」と述べたとしている。

 一方、外務省は8日、安倍首相とロシアのプーチン大統領が9日午後に北京で会談すると発表した。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS

 ≪「歴史」「領土」「危機管理」…首脳会談でも対立の火種消えず≫

 10、11日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて行われることが決まった日中首脳会談。両国政府はその地ならしとして7日に合意文書を発表した。会談では、表向き“友好ムード”が演出されるとみられるが、両国間の懸案である「歴史」「領土」「危機管理」をめぐる対立の火種を消すのは難しそうだ。

 「靖国不参拝」明言せず

 首脳会談実現に向けて水面下で行われた交渉では、中国側が(1)安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約(2)尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権問題の存在を認める-の2点を強く迫った。

 靖国問題について、日本側は合意文書に「靖国」と明記することを拒否。首相が外国に強制されて参拝をしないと明言する可能性がないことは中国側も認識しているとみられ、最終的に「政治的困難を克服」との表現に落ち着いた。

 日本の外務省幹部は「政治的困難」に靖国問題が含まれていることを認めているが、首相は7日夜のBSフジ番組で「これは個別の問題を含むものではまったくない」と説明。中国側の意向に関係なく、参拝について判断する考えを表明した。

 首相が今後参拝すれば、中国政府が今回の合意文書に「違反」していると批判する可能性もあるが、合意文書に「靖国」の文言が入らなかった事実は重い。外務省幹部は7日夜、文書で「若干の認識の一致をみた」と表現されていることについて「そこがいいところじゃないですか。この万感の思いをかみしめてほしい」と語った。

 「異なる見解」でもズレ

 一方、尖閣諸島の領有権問題に関しては、文書の中に「尖閣諸島」と明記された。ただ、日本側は「変な妥協は一切していない」(交渉担当者)としている。文書で「異なる見解を有していると認識」としている点についても、首相は7日夜、「日本の領海に(中国の)公船が入っていることについて中国側に抗議している。そうしたことが『緊張状態』となっているという見解となる」と述べた。

 とはいえ、首相自身が「中国側にはおそらく中国側の考え方があるわけだが…」と認めるように、領有権問題の存在の確認を要求し続けてきた中国側にすれば、日本側が歩み寄ったと評価している。国際的な宣伝戦で「日本が領有権の存在を認めた」と触れて回る可能性が高い。

 こうした事態を見越してか、日本側は合意文書の解釈をめぐる発信に余念がない。首相や外務省幹部が7日夜に日本の立場を繰り返し説明したほか、8日には石破茂地方創生担当相も読売テレビの番組で「(尖閣に)領土問題があることを認めたわけでない。日本の姿勢はまったく変わらない」と強調した。

 「不測事態回避」保証なく

 米国を含む国際社会が最も関心を寄せているのが、日中間における軍事的緊張の緩和だ。中国軍による射撃管制用レーダー照射や中国軍機の異常接近が相次ぐなか、偶発的な衝突につながる危険をはらむからだ。

 この点について合意文書は「危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた」と明記。日中両政府が大筋合意したままたなざらしとなっている「海上連絡メカニズム」の早期運用開始に期待が集まる。

 ただ、9月に中国・青島市で開かれた高級事務レベル海洋協議で連絡メカニズムに関する協議再開で合意したが、その後2カ月以上経過しても作業部会の日程は固まっていない。慎重姿勢を崩していない中国人民解放軍が日程調整に応じていないためだ。日本政府内には「中国軍部は首脳レベルのお墨付きがなければ動けない」(日中関係筋)との観測もあり、谷内正太郎国家安全保障局長と中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に、よう・けつち)国務委員との間で取り交わされた合意文書が膠着(こうちゃく)した現状を動かす保証はない。

 このため、首相は7日夜、日中首脳会談で習主席に連絡メカニズムの運用開始を働きかける方針を明言した。これに習主席がどう応じるかが、首脳会談における焦点の一つとなる。(SANKEI EXPRESS

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