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韓国旅客船沈没事故で地裁判決 船長に懲役36年 殺人罪は認めず
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韓国の旅客船セウォル号沈没事故の経過=2014年4月16日~2014年11月11日 韓国南西部沖で4月に起きた旅客船セウォル号の沈没事故で、乗客を救助せずに脱出したとして殺人罪などに問われた船長のイ・ジュンソク被告(69)ら乗組員15人への判決公判が11日、光州地裁で開かれ、地裁はイ被告に遺棄致死罪などで懲役36年の判決(求刑・死刑)を言い渡した。殺人罪は認めなかった。
負傷した同僚を見捨てて逃げたとして殺人罪に問われていた機関長については殺人罪を適用し、懲役30年(求刑・無期懲役)を言い渡した。また遺棄致死罪などに問われていた1等航海士に懲役20年(求刑・無期懲役)、他の乗務員12人に懲役15~5年が言い渡された。
検察は求刑で、イ被告が船内待機を放送で命令し救助措置をとらず先に船外に脱出したとして、殺人罪の成立を主張。イ被告は「待機命令後、脱出命令の放送も流すよう乗組員に指示した」と主張し、乗客が死んでも構わないという「未必の故意」を否定していた。
判決は「検察の提出証拠だけでイ被告が乗客らを死亡させると認識していたとみるのは困難」とし、イ被告の主張を認めた。一方、機関長については「不作為による殺人」に当たるという判断を示した。
判決に対し遺族らは強く反発。韓国メディアによると、傍聴席からは「何人死亡したと思っているのか」「(刑が軽過ぎて)むしろ(イ被告らを)釈放してくれ」との非難もあった。
事故は4月16日に発生。修学旅行中の高校生ら295人が死亡し、9人が依然、行方不明となっているが、事故発生以来続けられてきた海中での捜索は11日で打ち切られた。
海洋水産省によると、今後は船体引き上げに向けた技術的な問題を検討する。不明者の家族は11日、捜索打ち切りを了承する考えを示した。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)
≪政府の意向受けず 司法の独立示す≫
韓国の旅客船セウォル号沈没事故で、光州地裁は11日、船長が問われた殺人罪については無罪と認定した。韓国の司法は政府の意向や世論の動向の影響を受けやすいともされる中で、厳罰を望む国民感情などを前にしながらも、司法の独立を示した形だ。
死者・行方不明者304人を出した今回の事故をめぐっては、朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)が4月下旬、乗客の救助活動に当たらず真っ先に船を脱出した船長を念頭に、「殺人に等しい行為だ」と激しく非難。その後、検察当局が殺人罪での起訴に踏み切った。このため立証の難しい殺人罪での起訴は、朴大統領の意向に沿った措置とも指摘されていた。
昨年1月には、靖国神社に放火した後、在韓日本大使館に火炎瓶を投げて韓国で服役した中国人を、ソウル高裁が政治犯と認定。日韓犯罪人引渡条約に基づく日本への引き渡しを認めない判断を下している。このときは中国政府が韓国側に、日本へ引き渡さないよう要求していた。韓国司法が政府の意向に左右されやすいとされたケースだ。
ソウル中央地検は先月、朴大統領への名誉毀損(きそん)で産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を在宅起訴した。これも大統領府が民事・刑事上の責任追及を明言した直後に、検察が加藤前支局長に出頭を要請するなど政治的側面が指摘されている。
27日に始まる公判では、韓国が法治主義に拠(よ)って立つ国家であるか否かを国際社会が見守っている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)