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【まぜこぜエクスプレス】Vol.31 ハンパないエネルギーで輝く ハンディ持つアーティストたちの芸術祭

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.31 ハンパないエネルギーで輝く ハンディ持つアーティストたちの芸術祭

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(左から)美術家の中津川浩章さん、お気に入りの田久保妙さんの作品を手にする一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる、林原の政木和也さん、AlonAlonの那部史さん。中央が春日一志さんの作品=2014年11月4日、東京都千代田区(山下元気さん撮影)  「林原国際芸術祭‘希望の星’」は、さまざまなハンディをもちながらも芸術活動を行っているアーティストたちの才能を多くの人たちに知ってもらうことを目的に2003年から開催されてきた。今年のテーマは「太陽と月」。第1次審査を通過した32点の作品を紹介するアート展が、16日まで東京都千代田区の三菱商事「MC FOREST」で開かれている。

 「そうきたか!」とうなる

 障がいのあるアーティストとの活動を始めてから12年になるが、いつも新たな発見があり、ますますハートをわしづかみにされる。

 今年で10回目となり、長くかかわってきた‘希望の星’では、テーマ設定にも悩む。これまで「モナリザ」「ドラえもん」「ふくろう」などのテーマで行ってきたが、そのテーマの意味が自閉症や知的マイノリティーといった特性のあるアーティストたちに伝わるかどうかを考えるからだ。しかし、いつもそんなこちらの心配などあざ笑うかのように、爆走、ミステリアス、ダイナミック、緻密とまぁとにかく素晴らしい作品が送られてくる。紋切り型の作品はない。「そうきたか!」とうなってしまう。

 ‘希望の星’を主催する林原(岡山市)の政木和也さんは、今回のテーマについて、「障がいのある人たちも太陽と月のように輝いてほしいという願いが込められている」と語る。集まった作品を見ると、その輝きから、彼らがハンパないエネルギーを秘めていることがわかる。彼らの輝きを見逃しているのは、社会の方なのだ。森をイメージした暖かな雰囲気の会場に、思わず目を奪われるユニークな太陽と月が集まった。

 かき立てられる想像力

 太陽と月というテーマだけに、一見すると、鮮やかでビビッドな作品が多いが、「じっくり観察しながら見ると、また違った楽しさがある」と、美術家でキュレーターの中津川さん。実際、観察してみると、「あれっ?」「あれれ?」と発見があり、さらに想像力をかき立てられる。

 たとえば、会場の入り口に飾られているタペストリーにもデザインされた春日一志さんの作品。真っ青な背景に、大胆な曲線で描かれた赤と黄色の光。そして真ん中の太陽(?)は、なんと真っ黒に塗られている。日食だろうか。イメージがふくらむ。

 私のイチオシは、‘希望の星’の常連さんで、何度も賞をとっている田久保妙さん(所属・アトリエ海)の作品。フェルトペンで描かれた繊細かつカラフルで優しいタッチの太陽と月に、おもわずほおが緩む。愛にあふれた彼女の世界観がとっても好きだ。

 驚きから幸せに

 哲学的な作品、曼荼羅(まんだら)のような作品、水墨画のような作品、意表をつく貼り絵作品などなど個性豊かな作品がいっぱい。ぜひ、会場でお気に入りの一枚を探してほしい。

 今回、来場者の投票によりグランプリを決定する。グランプリに選ばれた作品は障がい者の所得向上を目指す活動のシンボルマークとなり、この活動に賛同する企業や団体、個人が、共同募金の「赤い羽根」のように身につける公式バッジのデザインに採用されるのだ。

 実は、会場でひそかに楽しみにしていることがある。「アートは難しい」とか「絵心がないから」とか、ちょっと敬遠していた人や、「障がい者が頑張っている」という既成概念にとらわれていた人の表情が、どんどん変わっていくのを見ることだ。驚きから、幸せそうな表情に。「来てよかったです!」と、ガシッと両手を握られることもある。

 彼らのアートのチカラはすごい。今回の会場も、そんなハッピーに包まれている。(女優、一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「林原国際芸術祭‘希望の星’2014『太陽と月を描く』」 三菱商事「MC FOREST」(東京都千代田区丸の内2の3の1)で2014年11月16日まで。午前11時~午後8時。入場無料。

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