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政治
沖縄県知事に「辺野古反対」翁長氏
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沖縄県知事選で当選を確実にし、万歳する翁長雄志(おなが・たけし)氏(中央)=2014年11月16日夜、沖縄県那覇市(共同) 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設の是非が争点となった沖縄県知事選は16日、投開票が行われ、無所属新人で前那覇市長の翁長雄志(おなが・たけし)氏(64)が3選を目指した現職の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏(75)=自民、次世代推薦=らを破り、初当選した。
翁長氏は辺野古移設に反対し、辺野古の代替施設を「造らせない」と主張してきた。当選の弁では、「(公約を)しっかりと実行するため、全力を尽くしたい」と述べた。政府は移設作業を推進するが、工期の遅れや反対運動の激化が懸念される。
今回の知事選は1972年の本土復帰後、常に保守対革新で争われてきた構図が崩れ、保守が分裂。元自民党県連幹事長の翁長氏が社民、共産両党など革新勢力と共闘し、4期16年、保守県政を支えた公明党は仲井真氏を推薦せず、自主投票とした。
96年の普天間返還合意以降の知事選で移設問題の争点が最も鮮明で、有権者が投票時に移設問題を重視する意向を強めた。翁長氏はその審判の結果、辺野古移設を容認する仲井真氏を抑え、県内移設に反対する候補者として当選したとアピールし、日米両政府や国連に辺野古移設の断念を訴えていく方針だ。
翁長氏は、昨年12月に政府の辺野古の埋め立て申請を仲井真氏が承認したことも批判。埋め立て承認の取り消し・撤回を「選択肢の一つだ」と明言している。
公有水面埋立法に取り消しや撤回の規定はなく、政府の埋め立て申請が都道府県に不承認とされた例もない。翁長氏が取り消しか撤回に踏み切っても「不服として抗告訴訟を起こせば勝訴できる」(高官)というのが政府の見解だ。
仲井真氏は「普天間問題を一日も早く動かす」と訴え、普天間飛行場の危険性除去を最優先にする姿勢を強調。ただ、民主党政権のあおりと、選対本部長を務めた翁長氏の執拗(しつよう)な説得を受け、前回知事選で「県外移設」を掲げたことが尾を引き、埋め立て承認で公約をほごにしたとの批判がつきまとった。
元郵政民営化担当相の下地幹郎(しもじ・みきお)氏(53)は辺野古移設の賛否を問う県民投票の実施、元参院議員の喜納昌吉(きな・しょうきち)氏(66)は埋め立て承認の取り消し・撤回を掲げたが、及ばなかった。
≪政府は移設作業推進 月内にも海上調査再開≫
政府は沖縄県知事選で翁長雄志(おなが・たけし)氏が当選した結果に影響されず、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設に向けた作業を推進する方針だ。中断している辺野古沖の海上調査を月内にも再開し、年内にも100メートル超の工事用桟橋の設置に着手。工事の変更申請などで翁長氏とどう折衝するか関係閣僚会議を開き、対応方針を検討するが、当面は翁長氏の出方をうかがう構えだ。
防衛省は8月中旬、海底ボーリング調査を始め、予定する16カ所のうち7カ所は9月中旬に完了。水深の深い9カ所は10月中に調査する予定だったが、台風の影響などで中断している。
フロート(浮具)は台風の強風や高波で海岸に打ち上げられたため、補修している。補修後、11月下旬か12月上旬に再設置し、ボーリング調査も再開する。
11月30日までとした調査期間は今年度末まで延長する。調査の目的は、埋め立ての設計に必要なデータの収集で、設計は今年度中に終える計画。「調査と設計は同時並行で進めており、設計に遅れは出ない」(防衛省幹部)とされ、来秋に護岸と埋め立ての工事に入る計画にも影響はない。
防衛省は9月、埋め立て工事の設計変更を県に申請した。移設に反対する稲嶺進(いなみね・すすむ)名護市長(69)の許可や同意を不要とする措置で、県が承認の可否を判断する。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事が12月9日までの任期中に判断するか、翁長氏に委ねるかは未定だ。
翁長氏が判断することになれば、移設阻止の第1弾として不承認としたり、判断を遅らせたりする可能性がある。その場合、当面の作業には支障はないが、作業が一定程度進展すると障害となり、工期が遅れかねない。
2015年度予算案の決定も待ち受ける。内閣府は概算要求で沖縄振興予算として14年度比293億円増の3794億円を計上した。
振興予算の中で政府が事業費を拠出し、20年に供用開始を予定する那覇空港の第2滑走路について、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は「既定路線でやるべきことはやっていく」とする一方、「県に協力してもらえる態勢でないと…」とも述べ、翁長氏を暗に牽制(けんせい)した。(半沢尚久、石鍋圭/SANKEI EXPRESS)