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創作できる空間がどんどん広がった 映画「西遊記~はじまりのはじまり~」 チャウ・シンチー監督インタビュー

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創作できる空間がどんどん広がった 映画「西遊記~はじまりのはじまり~」 チャウ・シンチー監督インタビュー

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ブルース・リーの物まねリクエストに快くファイティングポーズで応えるチャウ・シンチー監督=2014年7月22日、東京都港区(大橋純人撮影)  香港映画界を代表するスター俳優、チャウ・シンチー(52)が監督、共同脚本、製作と裏方に徹し、アクション満載のラブコメディー「西遊記~はじまりのはじまり~」を手がけた。タイトルが西遊記と銘打っていても、日本でもおなじみの物語とは違い、三蔵法師がまだ玄奘(げんじょう)という名の妖怪ハンターだった青春時代のお話。彼が孫悟空、猪八戒、沙悟浄と出会うまでの、まさに西遊記のはじまりのはじまりが描かれていて、中国では昨年の年間興行成績1位を記録した。

 物語完成まで10年

 シンチー監督は役者として参加しなかったことについて「出演するなら主人公でしょう。でも玄奘は20歳ぐらいの設定です。僕が演じるなんて絶対に無理でしょう。もう50歳を超えているんですよ。ほら、おなかだってこんなに出ているでしょう」と説明した後、上着をたくし上げて、腹回りについた肉をつまんでみせた。

 わらべ歌を武器とする心優しき妖怪ハンター、玄奘(ウェン・ジャン)は、なかなか妖怪を退治できず、いつも美人ハンターの段(スー・チー)に助けてもらってばかり。半魚半獣の妖怪(沙悟浄)はやっとの思いで退治できたが、巨大なイノシシ(猪八戒)にはまったく歯が立たない。これを倒せるのは、洞穴に閉じ込められている凶暴な猿(孫悟空)しかいないと耳にすると…。

 シンチー監督は仏門に精通しているわけではなく、存分に想像力を働かせて物語を執筆したという。「仏門に入った人が異性への愛情に向き合うのは、ドラマチックなこと。だって、仏教の教えと玄奘の気持ちとの間で相いれない矛盾が次々と表面化していくわけでしょう。創作できる空間がどんどん広がっていきました」。この物語が完成するまで、シンチー監督は10年近い歳月を要したそうだ。

 映像技術の進歩大きい

 なぜ今、中国でこの西遊記が大ヒットしたのだろう? シンチー監督は西遊記が昔から伝承されてきた大人気のお話であることを踏まえたうえで、「映像技術の進歩が大きいですね。映画監督がさまざまに創作できるようになったからです。この作品にも10年前では技術的に実現できなかった映像表現があります。10年後には別バージョンも出てくるかもしれませんよ」

 妖怪と妖怪ハンターが変幻自在に姿を変えながら死闘を繰り広げる場面は迫力満点だ。「大ファンだったブルース・リーに影響を受け、俳優を目指しました」と語るシンチー監督だけに、その格闘シーンは「水のようになれ」と広めたリーの哲学を無意識に表現している風でもある。「確かに僕は子供のころから彼の戦う姿をまねていましたよ。でも、この作品ではどうかなあ…」。それでも一生懸命、リーと本作の共通項を探し出そうと考え込んでしまう姿に、大スターの優しい人柄が見て取れた。11月21日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:大橋純人/SANKEI EXPRESS

 ■Stephen Chow(周星馳) 1962年6月22日、香港生まれ。87年「ファイナル・ジャスティス」で映画デビューし、金馬奨(台湾アカデミー賞)で最優秀助演俳優賞に輝く。その後、次々とヒット作を飛ばし、香港映画界を代表するスターに。主な出演作は、2001年「少林サッカー」(監督、主演、脚本、製作)、04年「カンフーハッスル」(金馬奨主演男優賞受賞)など。

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