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産経前ソウル支局長、あす初公判 対メディア訴訟連発する大統領府
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10月29日、2015年予算案について韓国国会で説明する朴槿恵(パク・クネ)大統領。政権下ではメディアに対する民事・刑事訴訟が頻発している=2014年、韓国・首都ソウル(ロイター) 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)に関するコラムをめぐり、名誉毀損(きそん)で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)に対する事実上の初公判が27日、ソウル中央地裁で行われる。弁護側は、朴大統領への誹謗(ひぼう)目的や虚偽事実はないとの主張を展開し、罪状について全面的に否認する。
当日は公判準備のために設けられたもので、人定質問や、検察側と弁護側による証拠申請をめぐる手続きが行われるほか、今後の公判日程について調整する。
ただ、起訴状などに対し加藤前支局長が意見陳述する可能性があり、事実上の初公判とみなされている。
加藤前支局長は8月3日、産経新聞のウェブサイトに朴大統領に関するコラムを掲載。大型旅客船セウォル号沈没事故当日の4月16日に、朴大統領が元側近の男性と会っていたとの噂があることを取り上げた。
これに対しソウル中央地検は10月8日、朴大統領を誹謗する目的で虚偽事実を広めたとして、加藤前支局長を情報通信網法における名誉毀損で在宅起訴した。
加藤前支局長はこれまでの事情聴取などで、大惨事の当日、国政の最高責任者である朴大統領がどこで何をしていたかは極めて重要な関心事だと主張。コラムは公益性があり、朴大統領を誹謗する目的はなかったと強調してきており、弁護側も公判で同様の主張を展開する。
弁護側はまた、コラムに朴大統領と元側近が男女関係であるかのように示した内容はなく、検察が指摘するような虚偽事実はないと主張する。
加藤前支局長は検察側による出国禁止の延長措置などで、3カ月以上出国できない状態が続いている。弁護側は27日、出国禁止措置についても速やかに解除するように要請する。
≪対メディア訴訟連発する大統領府≫
韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権下では、韓国メディアに対する民事・刑事訴訟も頻発している。特に4月のセウォル号沈没事故以降は急増中だ。
韓国記者協会発行の記者協会報によると、朴大統領が犠牲者を弔問する際に過剰な演出があったとの疑惑について報道したキリスト教放送(CBS)に対し、大統領府側が訂正と損害賠償を求めて提訴した。
左派系紙ハンギョレも、救助された子供を朴大統領が励ました際、何らかの演出があったのではというインターネット上の反応を報じ、大統領府側から訂正を求める訴えを起こされた。
一方、記事にしなくても訴えられたケースもある。朴大統領側が韓国の通信大手、KTの経営陣などに人事圧力を行使したという虚偽事実を周辺に広めたとして、大統領政務秘書官が保守系紙、朝鮮日報記者を名誉毀損(きそん)で告訴したという。
大統領府側に名誉毀損で告訴された経験をもつ韓国誌、時事ジャーナルのある記者は、記者協会報で「(大統領府は)メディアの批判や監視機能などに対し敏感に反応しすぎるようだ」と指摘している。
韓国メディアは朴正煕(チョンヒ)政権などの軍政時代、検閲を通じて弾圧された。1987年の民主化以降は言論の自由が進み、メディアによる政権批判が活発化。
これに対し、金大中(キム・デジュン)政権は大規模な税務調査を断行しメディアを牽制(けんせい)した。大手メディアと対立した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降、メディアへの訴訟が増えたとされている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
≪野党重鎮「大きな過ち」≫
最大野党、新政治民主連合の重鎮である文在寅(ムン・ジェイン)議員(61)は25日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損したとして、韓国検察当局が産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を起訴した問題について「非常に大きな過ちだ」と批判した。ソウル市内で行われた海外メディアとの会合で語った。
文氏は「表現の自由に対する法理や判例、世界的な基準に合わない。国際的に少し恥ずかしい」とも述べた。文氏は2012年の前回大統領選に出馬し、朴氏との事実上の一騎打ちで惜敗した。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)