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台湾統一地方選で与党大敗 首相辞任 民進党が躍進、政権奪還には課題も
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台北市長選で敗北を認め、支持者に謝罪する国民党の新人候補、連勝文氏(中央)ら=2014年11月29日、台湾・台北市(AP) 台湾の統一地方選は29日夕に投票が締め切られ、開票作業の結果、与党の中国国民党は最大の焦点となった台北と台中の市長選で敗れた。他の県市でも苦戦しており、与党の大敗となった。首相にあたる江宜樺(こう・ぎか)行政院長(54)は29日、統一地方選での与党国民党大敗の責任を取って辞任した。馬英九総統(64)の政権基盤の弱体化は必至で、2016年の総統選での政権交代の可能性が出てきた。
今回の統一地方選は2年後の総統選の行方を占う上でも注目されていた。台北市長選では、連戦国民党名誉主席(78)の長男で新人の連勝文氏(44)が29日夜、支持者に謝罪して敗北を認めた。特権階級の世襲だと批判され、基礎票を固めきれなかった。
当選を確実にした無所属新人で外科医の柯文哲氏(55)は実質的に野党、民主進歩党の支援を受けながらも、中台関係をめぐる国民党と民進党のイデオロギー対立の「政治文化」を変えると主張。若年層を中心に支持を広げた。
連陣営は選挙戦終盤、柯氏と民進党との近さを強調し、二大政党対決の構図に持ち込もうとしたが、及ばなかった。
台中市では、3期13年務める現職の胡志強氏(66)が多選批判に苦しみ、民進党の前立法委員(国会議員に相当)の新人、林佳竜氏(50)が当選を確実にした。
10%台の支持率にあえぐ馬政権への批判が示された形で、求心力の低下は避けられず、馬政権が進めてきた中国との経済関係の強化は停滞することが予想される。(台北 田中靖人/SANKEI EXPRESS)
≪民進党が躍進、政権奪還には課題も≫
台湾の統一地方選は与党、中国国民党が地盤とする台北市と台中市の市長選で敗退した。他の県市でも苦戦が伝えられ、馬英九政権のレームダック(死に体)化は避けられない情勢だ。野党、民主進歩党は躍進する見通しだが、2016年の総統選で課題となる対中政策の見直しが進んでおらず、政権奪還につなげられるかは予断を許さない。
「陳以真への投票は馬英九への支持」
南部の嘉義市では選挙戦中、国民党の女性市長候補、陳以真氏(37)のポスターの隣に、こんな文章だけのポスターが張られた。広告の依頼主は民進党員。強まる馬政権への反感を計算した上での「ネガティブキャンペーン」だ。
国民党の首長選関係者は「今回の争点は馬英九批判」と言い切った。与党が大敗すれば馬総統の求心力低下は必至で、馬氏が就任以来進めてきた中国との経済関係の強化は党内でも推進力を失う可能性が高い。
台湾メディアによると、中国で働く「台商」(台湾人企業幹部ら)のうち台湾に戻って投票した人数は、12年の総統選と比べ大幅に少なく、中国当局が馬政権への肩入れを避けたとみられている。大敗すれば、「中国側は馬政権を見放す」(研究者)との見方が出ている。
一方の民進党は、躍進すれば、蔡英文主席(58)が次期総統選候補の地位をほぼ確実にする見通し。だが、総統選の勝利は楽観視できない。当時も蔡氏が主席を務めていた民進党は、09年の統一地方選で躍進し、10年の5直轄市長選では総得票数で国民党を上回り、政権奪還への期待が高まった。
しかし、12年の総統選で蔡氏は約80万票差で馬総統に大敗した。敗因の一つは、対中政策で「独立色」を払拭できず、経済界から不安視されたことだ。
半面、学生らによる今春の立法院(国会に相当)占拠で噴出した反中感情を考慮すると、安易に対中融和路線にすり寄ることは難しい。
台北市長選で当選を確実にした柯文哲氏は「イデオロギー対立の解消」が評価されており、二大政党対決を強調する従来の手法に戻っても、支持は広がらない可能性が高い。
政治大の童振源特任教授は、「総統選は立法委員(国会議員)選と同日選になるが、民進党の立法委員は独立色が強い。党内の対中政策の調整は困難な道のりになるだろう」と話している。(台北 田中靖人/SANKEI EXPRESS)