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【安倍政権考】解散めぐるホンネとタテマエ

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【安倍政権考】解散めぐるホンネとタテマエ

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衆院解散を受けて記者会見をする安倍晋三(しんぞう)首相=2014年11月21日、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)  「本日、衆議院を解散いたしました。この解散は『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか、それを問う選挙であります」

 首相の解散権は自由

 衆院が解散された11月21日の夜、安倍晋三首相(60)は官邸での記者会見の冒頭、解散の“大義”について、政権の経済政策「アベノミクス」の是非を問うものだと強調した。

 解散を断行すること自体は3日前の18日の会見で表明しており、官邸内では当初「解散後に改めて首相が会見する必要はない」「記者団へのぶら下がり取材で首相がコメントすれば十分だ」との声が多かった。

 そうした見方を覆して再び首相が会見に臨んだのは「今回の解散はおかしい」と考えている世論が予想外に多いからだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が22、23両日に実施した合同世論調査でも、今回の解散を「適切だと思わない」と回答した人が72.2%に上った。首相としても、解散の“大義”をきちんと説明しておかなければ、足をすくわれると考えたに違いない。

 もっとも、首相周辺は「首相が自由に解散できるのは当たり前で、憲法でも認められている」と反論する。

 解散に関する憲法の規定は(1)天皇が内閣の助言と承認により国事行為として行う(7条)(2)衆院で内閣不信任決議案を可決するか、内閣信任決議案を否決した際に行う(69条)-の2つがある。いわゆる「7条解散」は、違憲との学説もあるが、時の政権の意思で自由に解散することを認めている。今回も含めた現行憲法下の解散23回のうち、内閣不信任決議を受けた「69条解散」は4回しかなく、ほとんどが「7条解散」なのだ。

 野党にも裏事情

 「今回の解散は大義がない」と批判する民主党も、2012(平成24)年11月14日の党首討論で当時の野田佳彦首相(57)が突然「16日に解散する」と表明した。意表を突かれた自民党の安倍総裁(当時)は「それは約束ですね、約束ですね。よろしいんですね、よろしいんですね」と繰り返し、動揺がうかがえた。

 党首討論後、上機嫌に衆院第1委員室を出てきた当時の岡田克也副総理(61)は「安倍さんが一国の首相の器じゃないことがよくわかったよね」と周辺に漏らした。突然の解散宣言が「安倍総裁は突発的な事態に弱い」という印象付けを狙った作戦なのは明らかだった。民主党政権も、少しでも自分たちに有利なタイミングで解散を打とうとしていたのだ。

 こうしてみてくると、野党が今回の解散を「大義がない」と批判するのは、「7条解散」の意味を知りながら、あえてそのことには触れずに安倍政権のイメージダウンを狙うという選挙戦略の一環なのは間違いない。本来ならば、野党にとって衆院解散・総選挙は、自民党一強状態の中で自分たちの勢力を拡大できるチャンスであり、それに反対するのは本末転倒といえる。報道各社の最新の世論調査で野党の支持率は自民党に大きく差をつけられており、なりふり構っていられないという事情もありそうだ。

 しかし、こうした解散の“大義”をめぐる野党の裏事情を政権側が声高に主張できないのも事実だ。「開き直り」と受け止められれば、せっかくの高い支持率がダウンしかねない。

 中国地方選出の自民党中堅は「支持者からも『何で今解散なのか』とたびたび聞かれるので、『首相が解散を決めちゃったからしようがない』と説明している」と苦笑いする。解散をめぐるホンネとタテマエを見極めながら、12月14日の衆院選では貴重な一票を投じたいところだ。(桑原雄尚/SANKEI EXPRESS

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