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政治
【取材最前線】人手不足の悪循環
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担当する流通、外食業界では人手不足が大きな問題となっている。製造業などでも問題になっているが、コンビニエンスストア、スーパー、専門店、居酒屋、牛丼チェーンといったサービス産業は、人がいないと成り立たないだけに深刻だ。経営者のインタビューや記者会見でも、人手不足が「経営上、当面の最重要課題だ」という声が多い。
この人手不足問題と同時に浮上しているのが、「ブラック企業」問題だ。本来、反社会的企業を指す言葉だったが、現在では、長時間勤務など労働環境が劣悪で、従業員を使い捨てにするような企業を指すようになっている。
この春に起きた人手不足を象徴する事象として、ゼンショーの展開する牛丼チェーン「すき家」が100店舗以上を営業休止にし、ワタミは今年度中に居酒屋チェーン「和民」など60店舗を閉鎖することを決めたことが話題になった。両社ともに、コスト削減のための少人数による店舗運営に人手不足が重なり、ネット上では、労働条件が過酷な“ブラック企業”と呼ばれることもある。
すき家は、全国7地域に分社化し、転勤がないなどの地域正社員制度を導入。ワタミは閉鎖店舗のスタッフを他店舗に回すなどの、人手不足対策を取った。多くの外食チェーンが同様の対策をとっているが、残念ながら、両社の場合は、「対策の効果は小さいだろう」というのが率直な感想だ。
人手不足で売り手市場となり、働く側の選択肢が広がるなかで、わざわざ“ブラック”とうわさされる企業を選択する人はいないという、ハンディを負うことになるからだ。
両社ともに「ブラック企業ではない」(ワタミの桑原豊社長)と言い切るが、ネットで広がった悪評を払拭するのは簡単ではない。人手を確保できないと、労働条件も改善できず、ますます選ばれない会社となってしまう恐れがある。
企業イメージを変えるのは、極めて困難な作業で、時間もかかる。よほど思い切った手を打たないと、ますます人手の確保が困難になり、悪循環に陥ってしまう懸念が拭えない。(平尾孝/SANKEI EXPRESS)