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【取材最前線】隣人がロシアである「悲劇」
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ウクライナ・リビウ州リビウ ウクライナの首都キエフやポーランド国境に近い西部のリビウ、そして重工業で名高い東部ドネツク。モスクワ支局在勤中、こうした街を何度か訪れた。そして、常々思っていた。ロシアと隣り合わせの「悲劇の国」だと。
ウクライナは西部はカトリック、東部は東方正教会の文化圏に長く属した歴史がある。ウクライナ語を話す西部の住民が「欧州の一員だ」と胸を張れば、ロシア語の方が得意な東部の人々は「私たちはロシアと一体だ」と主張する。街の雰囲気だって違うのだ。
取材の仕方も全く異なる。電話で目的を告げれば大学教授や地元政府高官が会ってくれる西部では、日中のインタビューでそれなりの話は聞ける。しかし、東部では役人に会うにも地元の有力者の紹介が欠かせないし、会えても仲介した人から「批判的な質問は避けてくれ」とくぎを刺されたりする。本音の話が聞けるのは、夕食に誘った相手がウオツカで口が軽くなる夜だけ、ということになる。
にもかかわらず、「同胞意識」は確かに存在していた。約2年前に訪れたときも、東西それぞれの人々が「あっちの住民が気に食わないこともあるが、私たちは同じウクライナ人だ」などと話していたと記憶する。
しかし、歴史的な民族の成り立ちに関わる微妙な問題をはらむだけに、誰かがそのバランスを崩せば「民族感情」が一気に噴出してしまう。それが今回、ロシアが果たした役割であり、その帰結がウクライナ南部クリミア自治共和国の一方的な併合だった。
「国際法違反だ」などと世界から寄せられる非難の声にも、ロシアのプーチン大統領は耳を貸さない。その理由を考えると、ある事例に思い当たる。
ロシアでは、スーパーなどで知人を見つけて会計を持つ列に割り込む人が後を絶たない。事あるごとに注意したが、素直に謝る人はまずいない。代わりに戻ってくるのは「ロシアのルールは世界のルールだ」「あなたがロシアに従え」といった大声だ。
一言で言えば、上から下まで米ソの二大超大国時代の「大国意識」にどっぷり漬かったままなのだ。独立した他国の領土を土足で踏みにじった罪は、いずれロシア自身へと跳ね返ることだろう。想像もつかないほどの大きな代償となって。(佐藤貴生/SANKEI EXPRESS)