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カトリックと英国国教会 ウクライナ支持の合図

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カトリックと英国国教会 ウクライナ支持の合図

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 【佐藤優の地球を斬る】

 英国のエリザベス女王が4月3日、バチカンを訪問した。

 〈英国のエリザベス女王は3日、バチカンを訪問し、ローマ法王フランシスコと初めて会談した。カトリックと英国国教会は対立し、最近も関係がぎくしゃくしていたが、対話により宗派間の団結を強める狙いがありそうだ。

 英国国教会は16世紀にヘンリー8世の離婚問題をきっかけとしてカトリックから分離して創設。女王は1980年、国家元首としてバチカンを史上初めて公式訪問、82年に当時のローマ法王、ヨハネ・パウロ2世が非公式ながら初訪英、和解を果たした。

 2010年に前法王ベネディクト16世が英国を公式訪問したが、国教会の信徒らにカトリック改宗を促すような姿勢をめぐり摩擦がある。英国では、カトリック聖職者による未成年者への性的虐待問題に対する批判も強い。(共同)〉(4月4日MSN産経ニュース

 女王のバチカン訪問

 エリザベス女王がこの時期にバチカンを訪問したことには、大きな政治的意味がある。英国女王は、同時に英国国教会の長でもある。この訪問には英国国教会がバチカンの政策を支持する意味合いがある。

 日本ではほとんど報道されていないが、ウクライナの政変には、カトリック教会が無視できない役割を果たした。ウクライナ西部ガリツィア地方のウクライナ民族至上主義者の思想的母体は、この地域を拠点とするユニエイト教会(東方典礼カトリック教会、東方帰一教会)である。16世紀末に成立したユニエイト教会は、イコン(聖画像)を崇敬し、下級聖職者の妻帯が認められるなど、外見上は正教会とよく似ている。しかし、ローマ教皇(法王)の首位権と聖霊は父と子(キリスト)から発出するという教義(専門用語では「フィリオクエ」、ラテン語で「子からも」という意味)を認めるカトリック教会だ。ユニエイト教会は、ウクライナ民族独立運動の中核になった。

 ガリツィア地方は、1945年にソ連軍によって占領されるまで、ロシア帝国やソ連の領土ではなかった。歴史的にハプスブルグ帝国に属し、18年に帝国が崩壊した後はポーランドの版図に属した。ソ連は46年3月、ソ連共産党の圧力の下で、ユニエイト教会はロシア正教会に吸収された。その後、ユニエイト教会の活動は厳禁された。しかし、ユニエイト教会は地下で活動を続けた。90年2月、ソ連のゴルバチョフ大統領がバチカンを訪問した後、ユニエイト教会の活動再開が認められた。ユニエイト教会はウクライナ民族主義と結びつき、ウクライナのソ連からの分離独立を求める中心になった。

 東方への影響力拡大

 宗教的観点から今回のウクライナの政変を見ると、カトリック教会の東方への影響力拡大という面がある。英国国教会の長であるエリザベス女王が、フランシスコ教皇と会見したという事実自体が、キリスト教の世界では、英国国教会がウクライナの新政権を支持しているという意味を持つ。

 この訪問に対して、ロシアは、カトリック教会と英国が連携を強化してウクライナ新政権を支援するというシグナルと見なすであろう。ウクライナ正教会には、独立系とロシア系がある。ロシアのプーチン政権は、ロシア正教会が自らの管轄下にあるウクライナ正教会の活動を強化し、カトリック教会に付け入る隙を与えないように腐心するであろう。ウクライナ危機は深刻になるとともに宗教対立が顕在化している。ユニエイト教会の信者と正教会の信者が衝突する可能性も出てきた。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

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