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危険な露・中・イランの「新枢軸」

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危険な露・中・イランの「新枢軸」

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 【佐藤優の地球を斬る】

 オランダのハーグで3月24日、G8(日米英仏独伊加露)のうちロシアを除くG7が首脳会議を行い、「ハーグ宣言」を採択した。宣言では<G7として、今回のロシアの違法な行動を強く非難し、今後も協調して行動していくことを確認>(3月24日外務省HP)。<G8ソチ・サミットの扱いについて、首脳間で率直な議論を行った結果、現状では本年6月のソチ・サミットには参加しないこと、また、2014年6月にブリュッセルで改めてG7首脳会合を開催し、幅広い議題について議論することとなった>(同上)。

 G7の圧力に屈して、ロシアがクリミア併合を撤回する可能性は皆無だ。これでG8の枠組みが消滅するか否かについて、現時点では何とも言えないが、ロシアはG7がソチ・サミットをボイコットしたことを侮辱と受け止めている。再びロシアがG8に参加することを認められたとしても、ロシアはそこで真摯(しんし)な議論を行わず、一方的な宣伝の場として利用するだけだ。首脳間の信頼関係が存在しない下でG8を行っても、成果は期待できない。

 核保有国の帝国主義

 ロシアは、二国間交渉を積み重ねることによって、帝国主義的な勢力均衡外交を始めると筆者は見ている。米欧と日本がロシアを追い詰めると、ロシアは中国とイランへの戦略的接近を強め、モスクワ・北京・テヘランの「新枢軸」が形成される。

 ロシアが中国に接近すれば、直ちに中国軍が尖閣諸島に上陸するというような見方もあるが、筆者はそのような見方にはくみしない。中国はそのような冒険をして経済制裁によって、エネルギーの輸入ができなくなることを懸念しているからだ。ロシアにも中国のエネルギー需要を全面的に賄う余裕はない。

 ただ、ロシア、イラン、中国が戦略的提携を深めれば、中国はロシアとイランから安定的にエネルギーを確保するシステムを構築することができる。そのとき中国は、本格的な膨脹戦略を取ることになる。国際連合はもとより、国際連盟が成立する以前の、帝国主義のゲームのルールがよみがえりつつある。ただし、以前の帝国主義と異なるのは、ロシアと中国が核保有国で、イランも核開発を進めていることだ。

 ウクライナの連邦化必要

 G7は、ウクライナ問題でロシアと折り合いをつけるべきと筆者は考える。それは、ロシアを中国、イランとの連携に追いやることによる国際秩序に与える悪影響の方が、ウクライナ問題でG7がロシアと妥協するよりもはるかに大きいからだ。

 焦眉の課題は、ロシア語を常用するウクライナ人とロシア人が多数派を占めるウクライナの東部と南部における国境線を維持することだ。そのためには、ウクライナ新政権のエスノクラシー(自民族至上主義)に歯止めをかけなくてはならない。欧米の政府とマスメディアは、ウクライナ西部のガリツィア地方に拠点を持つ、「自由党」の危険性を過小評価している。「自由党」は国際基準では、ネオナチに相当するような政治勢力だ。この点に関するロシアのマスメディアの報道は間違っていない。ウクライナで生じている事態をわれわれ日本人は等身大で見ることが重要と思う。

 国際秩序をこれ以上、混乱させないようにするためには、ウクライナを連邦化することが必要だ。ウクライナの東部と南部に広範な自治権を持つ地方政府を形成する。そして、キエフの中央政府が、地方政府とロシア語を常用する人々、ロシア国籍保持者の人権を保障することを約束する。ウクライナを連邦化すれば、ロシアもキエフの新政権を承認する。

 事態をこのまま放置しておくとウクライナの東部と南部で、ロシアへの編入を求める住民投票の動きが強まる。先手を打ってウクライナが連邦化すれば、ロシアもクリミア方式の介入を避けると思う。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

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