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【ウクライナ情勢】露、クリミアで「静かな占領」拡大

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【ウクライナ情勢】露、クリミアで「静かな占領」拡大

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ウクライナ海軍、ロシア海軍黒海艦隊(司令部ウクライナ・クリミア自治共和国と特別市セバストポリ)。※「ミリタリー・バランス」2014年版などから。※2014年3月18日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は首都モスクワのクレムリン(大統領府)での演説で、ウクライナ南部クリミア自治共和国と特別市セバストポリのロシア連邦への併合を宣言した。  ロシアによるウクライナ介入で、ウクライナ南部クリミア半島各地でロシア側部隊が武装解除を進め、半島の掌握を進めている。海軍の総司令官がロシア側に付いたほか、ロシア側への投降を呼びかける動きも確認された。ロシアによる「静かな占領」が拡大している形だ。

 クリミア自治共和国での報道によると、ロシア側部隊は半島東部ケルチとフェオドシヤの海兵隊施設を封鎖。ケルチ海峡をまたいだロシア側に装甲車が集まりつつあるとの情報もある。

 ロシア側部隊は半島南部ベルベクやキーロフスク、北部ジャンコイで軍用空港を占拠。南東部スダクの航空管制施設から武器・弾薬を持ち出したほか、クリミアの国境警備当局を支配下に入れたとしている。

 また、ウクライナ海軍のベレゾフスキー総司令官が3月2日、親露の自治共和国に忠誠を誓い、波紋を広げている。自治共和国はベレゾフスキー総司令官率いる「クリミア海軍」を創設すると発表しており、セバストポリの海軍参謀本部はロシア側が掌握したもようで、暫定政権への打撃は大きい。一方、ロシアのメドベージェフ首相は3日、ロシア南部のタマン半島とウクライナ南部のクリミア半島の間に、橋か海底トンネルを建設するよう指示した。

 自治共和国議会のコンスタンチノフ議長は2日の記者会見で、シンフェロポリの議会や政府庁舎を支配しているのがロシア部隊であることを事実上認めた。議長は今月(3月)30日に予定される住民投票で、クリミアに「国家」の地位を与えることの是非を問うことを明らかにした。

 ウクライナ暫定政権のヤツェニュク首相は2日、「惨事(戦争)の一歩手前にある」と警告した。暫定政権は2日、全軍に戦闘警戒態勢をとるよう命じ、予備役招集を開始するなど、対立が深刻化している。

 ロシア側の動きを、ケリー米国務長官は2日、「口実を捏造(ねつぞう)して他国に侵攻するのは19世紀の行為であり、21世紀のやり方ではない」と非難。資産凍結や貿易面での制裁、査証(ビザ)の発給停止などの制裁を検討する考えを示した。(キエフ 内藤泰朗、シンフェロポリ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

 ≪住民の6割がロシア系 「新欧米派」認めず≫

 ロシアのプーチン政権がウクライナ南部クリミア半島に軍事介入することを決めた。介入の経緯やクリミアの歴史をQ&A形式でまとめた。

 Q クリミアとは

 A 黒海に突きだす半島で、面積は四国の1.4倍にあたる2万5500平方キロ。冬季五輪が行われた黒海沿岸のソチと同様に温暖で、半島南端のセバストポリではロシア海軍が黒海艦隊の基地を租借している。ソ連時代から保養地として知られる半島南部のヤルタは、第二次大戦末期に米英ソが密約を結んだヤルタ会談で有名だ。半島のほぼ全域がウクライナのクリミア自治共和国に含まれる。

 Q ロシア介入の経緯は

 A ウクライナでは2月下旬、首都キエフや西部での大規模な反政権デモを受け、親露派の政権が崩壊した。しかし、人口約200万人のうちロシア系が6割を占めるクリミアはロシアへの親近感が強く、政変で発足した親欧米派の暫定政権を認めていない。プーチン政権はこれに乗じ、「ロシア系住民やロシア軍人の保護」を名目に部隊を派遣する方針を決めた。

 Q なぜ今はウクライナ領なのか

 A 旧ソ連のフルシチョフ書記長が1954年、ロシアによるウクライナ併合300年を記念し、クリミアの帰属をロシアからウクライナに変更した。ソ連崩壊後にはクリミアの帰属が問題となったが、97年にはウクライナ領であることが両国間で確認されている。ソ連時代からあった黒海艦隊の艦船はロシア81%、ウクライナ19%の比率で分割し、ロシアはセバストポリの基地を租借することになった。

 Q ロシア介入の本当の理由は何か

 A ロシア人には今も、ウクライナを独立国と考えない帝国主義的な意識が強い。政権には、そのウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指す親欧米国となってしまうことへの危機感がある。クリミアについては特に、プーチン氏自身が「ロシア固有の領土」と過去に発言している。

 ウクライナでは2008年、当時の親欧米政権が黒海艦隊への基地貸与を打ち切る方針を決めたことがあり、地中海への窓口である要衝を失うわけにいかないとの焦りもある。(ウクライナ南部シンフェロポリ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

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