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「密室の闘争」周永康氏逮捕へ 中国共産党 巨額収賄「重大な規律違反」
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2012年5月4日、北京の人民大会堂で行なわれた中国共産主義青年団の創立90周年記念大会に出席した周永康氏(当時、党政治局常務委員)。司法のトップとして絶大な権力を振るった周氏に、「法治」を盾に厳罰が下されるのは必至だ=中国(AP) 中国の大物政治家で、石油閥の総帥を務めながら「重大な規律違反」に問われていた周永康(しゅう・えいこう)氏について、中国共産党政治局は5日の会議で、周氏の党籍剥奪と、逮捕、訴追に向けた司法機関への送致を決めた。党の機関決定を受けて、捜査を指揮する最高人民検察院は周氏の逮捕を決定した。国営通信新華社が6日伝えた。周氏は、2012年まで最高指導部のメンバーである党政治局常務委員(序列9位)と、司法機関を統轄する党中央政法委員会書記を務めた。政治局常務委員の経験者が正式に逮捕、訴追されるのは、1949年の新中国成立以来これが初めてとなる。
党政治局は5日の会議で、党員の統制にあたる党中央規律検査委員会が提出した周氏に関する報告書を討議。周氏に「党の政治、組織、秘密保持をめぐる重大な規律違反」を認めたほか、家族ぐるみの巨額の収賄などで国有資産に重大な損失を与えたと判断した。さらに多数の女性との不道徳な関係も罪状に挙げた。その上で、政治局は周氏に関して、「党の性質や趣旨から完全に離反した」として、極めて重い反党的性格を帯びたとの政治的認識を示した。この認識は、検察による捜査から公判での量刑にまで影響することが確実だ。
この12月で72歳となる周氏は、昨年10月を最後に公式動静が途絶。今年7月に規律違反による党の査問開始が公表されていた。
周氏は大手国有企業「中国石油天然ガス集団(CNPC)」の前身企業の社長を務めるなどした「石油閥」の大物。石油利権を手中に収めるとともに、上海閥を率いた江沢民元国家主席(88)=元党総書記=との強い関係の下で、政法委書記として司法、警察を自由に操るなど、一時絶大な権力を握っていた。汚職や不正蓄財の規模は、これまで数千億元(数兆円)とも伝えられ、今後の捜査で明らかにされる。
周氏は失脚した薄煕来(はく・きらい)・元重慶市党書記(65)らと共謀し、党の権力奪取をもくろんでいたとの情報があり、全容の解明が公判に向けた焦点となる。
習近平国家主席(61)=党総書記=が党内の一部勢力の反対を押し切って、周氏の刑事責任追及に踏み切ったのは、前例のない汚職追及の姿勢を内外にアピールし、失墜した党の信頼回復を目指すとともに、自らの権力基盤を固めるのが狙いとみられるが、その効果を疑問視する声は少なくない。
そもそも、「このような人物がなぜ抜擢(ばってき)され続け、共産党の最高幹部にまで出世できたのか」「他の党高官は同じようなことをやっていないのか」といった疑問を持った国民は少なくない。
また、今回の周氏に限らず、党高官への調査に関する報道は厳しく管理され、ほとんどのメディアは国営新華社通信の原稿だけを使うように指示されている。独自の取材や論評は許されておらず、「密室の権力闘争の結果を国民に宣伝しているだけ」との印象は拭えない。
さらに、欧米や香港のメディアが報道したように、曽慶紅(そう・けいこう)元国家副主席(75)、温家宝前首相(72)ら多くの大物党指導者の親族にも巨額な不正蓄財の疑惑がある。周氏への厳しい対応で、党内の緊張が一気に高まったとの情報もある。習主席による反腐敗キャンペーンが今後も続くなら、身の危険を感じた党長老が束になって逆襲に出てくる可能性もある。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)