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「APECブルー」のち再び「北京グレー」
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アジア太平洋経済協力会議(APEC)の期間中、普段はスモッグに覆われてばかりの北京に、見違えるほどの青空が広がった。強風がスモッグを吹き散らす日が偶然続いたのではない。青空は、国際会議の議長国としての体面を気にした中国当局が、大気汚染の原因を封じ込めた結果生まれたものだ。中国のネットやメディアでは、「APECブルー」と皮肉混じりに呼ばれた。だが、北京の空は、今やすっかり「日常」を取り戻してしまっている。
「現在の北京の青い空は、『APECブルー』であり、きれいだが一時的ですぐになくなってしまう、という人がいます。たゆまぬ努力を通じて、APECブルーを持続させることができる。私はそう信じています」
中国の習近平国家主席(61)は11月10日、APEC首脳会合に参加する各国首脳をもてなす歓迎宴で、自らネットの流行語を用いてあいさつした。
APEC開催に合わせ、北京市内では車両のナンバープレートに応じた通行規制が敷かれるなどしたが、非常手段がとられたのは何も北京だけではなかった。中国国営新華社通信が15日にウェブサイトに掲載した記事によれば、APECブルーを実現させた最重要の要因は北京市、天津市、河北省とその周辺地域が共同実施した「空気品質保障工作」だった。
北京市に隣接する河北省内では期間中、約2000社に操業停止、約1900社に生産制限、約1700カ所の建設現場で工事中断の措置がとられた。
地元経済に影響が出ないはずはなく、河北省石家荘市では、企業の生産総額は124.2億元(約2385億円)減少、利益も12.6億元(約242億円)減ったと新華社通信は伝えた。
11月12日付の北京紙新京報(電子版)が、「数々の非常手段を持続させることは客観的に見て困難だ」と指摘したように、APECが閉幕し規制が解除されると、習主席の発言から10日もたたない19日には、重度のスモッグが北京市を覆った。
中国共産党機関紙、人民日報のニュースサイト人民網の11月20日付報道によれば、全国161都市が対象の大気汚染度ランキングで、北京市は20日午前7時の時点でワースト5位。
中国のニュースサイトには「『APECブルー』は休暇 『北京グレー』再現」の見出しが躍った。
「WTOなどの共同研究は、中国では大気汚染によって、年間に35万~50万人が早死にしていると結論づけた」
こう指摘した中国衛生省の元トップらの論文が、英医学誌ランセットに掲載され注目されたのは昨年12月。それから1年が経とうとしているが、中国各地でスモッグに包まれた日々を送る市民らの不満は高まるばかりだ。
インターネットの普及で中国でも政治に対する「世論」の影響が無視できなくなっているが、米紙シカゴ・トリビューン(電子版)は11月14日付の記事で、中国の大気汚染と政治体制の関係性を次のように指摘した。
「将来の中国共産党による支配を脅かす一番の要因はおそらく大気汚染であろう。共産党政権が政情不安を予防したいのなら、空気をクリーンアップすべきだ」(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)