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周永康氏が失脚 政局に激震必至 中国元最高指導部メンバー

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周永康氏が失脚 政局に激震必至 中国元最高指導部メンバー

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中国の元最高指導部メンバー、周永康氏(政治局常務委員)をめぐる動き=2012年3月15日~2013年12月20日  中国国営新華社通信は7月29日、周永康・前政治局常務委員(71)が重大な規律違反の容疑で党の規律部門の取り調べを受けていると伝えた。容疑は明らかにされていないが、汚職などの経済問題の可能性が高い。中国共産党の最高指導部のメンバーを務めた大物政治家が失脚するのは25年ぶり。習近平国家主席による権力集中の一環で、政敵として狙われた側面が強いと指摘される。治安、警察部門に今も大きな影響力を持つ周氏の失脚で、政局に激震が走るのは必至だ。

 周氏は、江沢民元国家主席が率いる上海閥の重鎮として知られる。国有企業、中国石油のトップを経て政界入りし、大きな利権を持つ石油閥の中心人物。公安相を経て2007年に政治局常務委員となり、胡錦濤政権で党内序列9位ながら、警察、検察、司法部門を統轄する責任者である党政法委書記として大きな権力を振るった。

 12年春に失脚した薄煕来(はく・きらい)元重慶市党委書記と深い関係があることでも知られていた。昨年(2013年)夏から、周氏の側近を務めた幹部が次々と経済問題で失脚し、周氏本人の、拘束情報が何度も飛び交った。

 1989年6月の天安門事件の直後に、民主化運動を支持したとされる趙紫陽元総書記が更迭されたが、その後、最高指導部メンバーは失脚していない。当時の最高実力者だった●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏が党内の権力闘争激化を避けるために、政治局常務委員クラスの指導者の責任を問わないとの暗黙のルールをつくったといわれる。

 今回、習主席が●(=登におおざと、とう)氏がつくったルールを破ったことは、長年の党内権力バランスを崩したといえる。

 中国共産党の長老と現役指導者は、7月末から8月上旬にかけて河北省の避暑地、北戴河で重要会議を開く予定だ。共産党関係者は「党内の反対意見を封じるために、北戴河会議前というタイミングで周氏の失脚を発表した可能性が高い」と話している。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

 ≪習政権 不文律を破り「トラたたき」≫

 習近平政権が、長く汚職追及の最大標的とみられてきた周永康・前政治局常務委員の取り調べを発表した。最高指導グループにあたる政治局常務委員に対しては、現職、経験者を問わず「刑不上常委」(常務委員には刑事責任を追及しない)との不文律があったが、習政権はこの慣例を破った。

 周氏は石油閥のトップとして資源利権を使って私腹を肥やす一方、党政法委員会書記を務めた経歴から、司法、警察畑を牛耳ったことで、国内での追及を逃れたとみられてきた。

 北京の共産党史の研究者によると、かつての最高実力者、●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏は、党内対立が1989年6月の天安門事件を誘発したとの反省から、党内の権力闘争の激化を避けるため「刑不上常委」という言葉を残したのだという。こうした中で、習氏が周氏の取り調べに踏み切った背景には、経済利権と治安機関を握り続けた周氏をも排除することで、習氏の求心力を高め、政権基盤の強化につなげようとの思惑があるとの見方が強い。

 このほか、汚職金額が数億元にのぼるとみられる周氏を不問に付すのでは、「腐敗撲滅」を掲げる政権として党内への示しが付かないという事情もある。

 習氏は党総書記に就任して以来、「ハエもトラも叩(たた)く」と宣言し、軍のトップ経験者や大物政治家らの汚職摘発を政権の最大のテーマとして掲げてきた。しかし、汚職の頂点とみられ、江沢民氏に連なる周氏の処分が年単位で延び延びとなってきたことで、中国国内では「トラがハエを叩いている」と、汚職摘発の尻すぼみぶりを揶揄(やゆ)されていた。

 共産党筋によると、「習主席は周氏の後ろ盾である江沢民氏に周氏の責任を追及する意向を報告し、これまでに同意を取り付けた」という。だが、これまで李鵬元首相ら長老の反対で本格的な着手には手間取り続けてきたという。

 このタイミングでの処分着手は、今年後半の政治動向を決める党内駆け引きで、最終的に江沢民氏らの反発を抑えきったことによる。だが、周氏を事実上の失脚に追い込んだことは、党内バランスを破壊する衝撃を持つだけに、習氏がこのまま盤石の基盤を確立できるかは決して楽観できない。(SANKEI EXPRESS

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