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音楽が一番素晴らしい外交官 ワレリー・ゲルギエフ PMF芸術監督に就任
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2006年の国際教育音楽祭パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)で指揮するワレリー・ゲルギエフ=2006年7月9日(PMF組織委員会提供) ロシアの世界的な指揮者ワレリー・ゲルギエフが、札幌市を中心に行われる国際教育音楽祭パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)の6代目の芸術監督に就任する。契約は2015年から3年間。04年と06年にPMFの首席指揮者を務めたゲルギエフは「私は日本に何度も来ています。日本人の音楽の考え方をよく知っています」と話す。
世界を飛び回る超多忙なゲルギエフは、今秋、芸術総監督を務めるマリインスキー歌劇場管弦楽団とともに来日した。
「アメリカや中国など、PMFには太平洋をまたいで多くの国々の若者が参加します。PMFは、彼らの発展の場となることが大切です。クラシック音楽の大きな伝統を持っていない国の若者も、すべて平等に教育の機会が与えられることを願っています」
PMFは1990年に第2回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した指揮者・作曲家レナード・バーンスタインが提唱しスタート。今夏は25周年記念の音楽祭が行われた。来年のPMF2015は7月12日から8月4日まで開催される。
「私はPMFの伝統を正確に知っているつもりです。バーンスタインが誕生させ、導き、大きな成果をあげてきました。これまでの25年間、すぐれた音楽家たちがPMFの豊かな伝統を築いてきました。日本という国が、この音楽祭を提供してきたことが素晴らしい。若い音楽家たちは、日本の緑豊かな素晴らしい町、札幌で過ごすわけです。彼らにとって印象深い数週間になってほしいと思います」と話す。
ゲルギエフはマリインスキー歌劇場で若手歌手の育成に努めており、来年6月に行われるチャイコフスキー国際コンクールの総裁でもある。
「私は、マリインスキー歌劇場では若い歌手たちとたくさん仕事をしています。6年ほど前、チャイコフスキー国際コンクールの総裁に選ばれました。ロストロポーヴィチの後継者としてです。過去、偉大な音楽家たちは、若い人たちをサポートする仕事を面白いと思って引き受けました。ですから私も引き受けたのです。バーンスタインは晩年、最も大切な仕事は若い人の教育だと言っていました。彼の気持ちはいま、よく分かります。私はPMFの芸術監督の仕事を引き受けることを、ただ、手探りで『はい』と言ったわけではありません」
PMFにはベルリン・フィルやウィーン・フィルなど欧米の一流オーケストラのメンバーが教授陣として参加する。今年のアカデミー生は26カ国・地域から122人。これまで世界72カ国・地域から、延べ3126人が参加し、卒業生は世界中のオーケストラで活躍している。
「私は音楽を通して世界がより良くなっていくこと、世界の国々の善隣関係が築かれることを信じています。信じているからこそ、芸術監督を引き受けました。朝鮮半島、エボラ出血熱など世界は複雑な状況です。いろいろな外交官がいますが、ある意味、音楽が一番素晴らしい外交官だと思います。PMFに参加する若者に望みたいのは、すべての作曲家について、豊かな世界を発見してほしいということです」(月刊音楽情報誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄/SANKEI EXPRESS)