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卓越した演奏、アレンジ、歌詞 ゲスの極み乙女。 待望の1stフルアルバム
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4人組バンド、ゲスの極み乙女。(左から)ちゃんMARI、ほな・いこか、川谷絵音、休日課長=2014年9月13日(提供写真) 飛ぶ鳥を落とす勢いで人気も評価も急上昇中の、ゲスの極み乙女。意表を突くバンド名だが、そもそも川谷絵音(Vo&G)が、自身が活躍するindigo la Endとは別にミュージシャン仲間と遊び心から2012年に結成したもの。それが13年にインディーズからデビューし、14年にメジャーデビューすると、あっという間にコンサートチケットを入手しにくいほどの人気となり、TVドラマの主題歌も担当するように。今年一番話題のバンドとなった。
私はライブハウスでの演奏で「餅ガール」という曲に合わせて餅を投げはじめた頃も見てきたが、当初から“ヒップホッププログレバンド”と称されていたように、卓越した演奏や歌詞のセンス、その独創的なスタイルには秀でたものがあった。「indigo la Endとは差別化している」という川谷は、脚本家・指揮者のような立場で曲を概念的に作り上げてしまうという天才肌、そこにプログレッシブロックやファンクミュージックが好きな休日課長(B)、クラシックやジャズの造詣が深いちゃんMARI(Key)、ファンクが好きで16ビートを得意とするほな・いこか(Dr)の、想像をはるかに超えた変幻自在のテクニックが発揮されている。
過去3枚のミニアルバムでは、どこかシニカルでウイットにも富んだ歌詞世界、演奏には濃縮した派手な見せ場が随所に盛り込まれていたが、最新作では「今回は流れるように聴かせられる曲だけを作った」(川谷)と話すように、ガラリと趣向を変えてきた。とはいえ、オープニング曲「ラスカ」での濃密なリズム隊を軸とした交錯ぶり、「crying march」の間奏でのオルガン~ギター~ピアノといったソロから曲を盛り上げる展開や、「光を忘れた」でのギターとピアノの複雑なアンサンブルと女声コーラス、それらを支える強靱(きょうじん)なリズム隊など、曲の情感を押し上げるアレンジには感動するばかりだ。そこへ引き込むのは「今まで他人に見せなかった弱い心を全部吐き出した」(川谷)という内省的な歌詞の存在も大きい。
「忙殺されそうだったし、音楽が正当に評価されていないと思っていたので、そういうものに対する葛藤みたいなものがすごくあった」という川谷だが、今やindigo la Endの注目も高まり、SMAPをはじめ、楽曲提供の場も増えてきた。まさに『魅力がすごいよ』と呼ぶにふさわしい自信作がここにある。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)